フランスは全土18カ所の原子力発電施設に56基の原子炉を保有する。原子炉保有数はアメリカに次いで世界第2位だ。
さらにマンシュ県のフラマンビルに57基目となる新しいタイプの欧州加圧水型原子炉(EPR)を建設中。マクロン氏は、脱炭素へのエネルギー転換に向けて、さらに6基を増設する方針も打ち出している。
原子力発電はカーボンニュートラル(脱炭素)に至る過程の経済活動を支えるエネルギー源と位置付けられている。
フランスの原発テロ対策としては、2016年に、国内の原子力発電所へのテロ攻撃に対する防御能力の検証を行った。その前年、2度にわたる大規模なイスラム過激派によるテロが発生し、シャルリー・エブド編集部襲撃事件で11人、パリ同時テロでは130人が犠牲になったこと、テロとの戦いのための欧州連合(EU)の対策チームが、5年以内にイスラム過激派が発電所を乗っ取る可能性があるとの認識を示していたことなどが理由だ。
それ以前の2014年には、7つの原発施設が無人偵察機による不審な飛行を確認し、それらを制御できなかったことで、国防上の深刻な懸念も示されていた。18カ所ある施設の1つでも大規模な武力攻撃を受ければ、放射能の拡散リスクと同時に、優れた技術者の人的損失にもつながる可能性があるということで、政府が潜在的なテロの脅威から施設を保護するためにどのような解決策が必要か検討した経緯がある。
特殊訓練を受けた部隊が原発を警備
では、現状の体制はどうなっているのか。
フランスの原子力発電センター(CNPE)によれば、地域の治安維持に当たる国家憲兵隊と原発運営者であるフランス電力(EDF)の連携でテロの脅威の変化に常時対応している。
国家憲兵隊が創設しEDFが連携する、特殊訓練を受けた憲兵隊特殊防護小隊(PSPG)が原発の警備を担当しているほか、国家憲兵隊の領土ネットワークによって、領土全域で迅速な部隊の介入態勢が整えられるなど、専門的な原発テロ対策措置がとられている。緊急事態の道路封鎖などの県知事の権限に対する法的整備も行われている。
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