専門医が指摘「危険ないびき」「ただのいびき」の差 無呼吸を防いでよい睡眠も得られる「CPAP治療」

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鼻にマスクをつけて圧力で風を送り、つぶれてしまうのどを押し広げることで、無呼吸状態を防ぎ、よい睡眠がとれるようにする治療です。人間の体が呼吸をするとき、息を吸うと肺が膨らみ、胸が広がります。それにより、空気が鼻からのどを通って肺へと送り込まれます。楽器のアコーディオンのようなイメージですね。

しかし無呼吸のときは、のどはつぶれてしまっているため空気を取り込めません。これを防ぐため、鼻マスクから圧力をかけて空気を押し込み、息の通り道であるのどを広げようとするのがCPAPの原理です。

東京ドームを思い浮かべてください。東京ドームに行ったことのある方は、出口から外に出るとき、ブワッと風の圧力で押し出されることをご存じだと思います。なぜあのようになるかというと、ドーム内の気圧は外部より0.3%ほど高くなっているためです。

東京ドームの屋根は約400トンもの重量があるそうで、圧をかけて屋根を膨らませ持ち上げているそうです。よって圧力がかかっていないとき、屋根はしぼんでいます。

CPAPもこの原理と似ていて、鼻から風を送り、圧をかけることで、のどというつぶれやすい部位を広げているイメージです。なお、ここでCPAPにより送り込まれるのはあくまで風、空気であって、酸素ではありません。単に圧力をかけているのです。

CPAPを使う場合、鼻呼吸ができていることが前提で、鼻がつまるとCPAPは使えません。したがって鼻づまりのため鼻呼吸ができず、CPAPを付けて苦しい場合は、まずは鼻呼吸のための治療をしなければなりません。

よく質問を受けるのですが、あくまでもCPAPは症状を改善するものであって、その後CPAPがなくても無呼吸が治ってしまうというものではありません。眼鏡と同様、矯正装置です。したがって、使用を中断してしまうと、元に戻ってしまいます。

ただし、肥満の程度が強い方は、ダイエットをすることで、軽減や改善が見込めることもあります。

CPAPで眠りの質はよくなる

鼻呼吸ができるようになると無呼吸が改善するのではないか、という研究は、20年くらい前に盛んに行われていましたが、望ましい結果は出ませんでした。鼻呼吸ができるようになったからといって無呼吸が治るわけではないというのが、現在1つの結論となっています。

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ただし、眠りの質は明らかによくなります。CPAP治療をする人に鼻治療を施すのは、あくまでも鼻呼吸によりCPAPが使用できるようにするためのサポートなのです。

CPAP治療をされている60代の女性は、CPAPを使いはじめて無呼吸や血液中の酸素飽和度の低下が改善された結果、「これまではイヤな夢や、恐い夢をみることが多かったけれど、CPAPをはじめてから悪い夢がほとんどなくなり、いい夢を見るようになりました。この間はお花畑にいる夢を見ちゃいました!」と、夢の中身が良くなったことを大変喜んでいました。

悪い眠りは、ストレスホルモンの分泌も高めることになり、悪夢につながることもあるんですね。夢のようなホントの話です。

高島 雅之 たかしま耳鼻咽喉科院長

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たかしま まさゆき / Masayuki Takashima

1994年金沢医科大学医学部卒、1998年同大学大学院修了。同大講師を経て、2007年幸仁会耳鼻咽喉科たかしまクリニック開院(2015年、たかしま耳鼻咽喉科に名称変更)。日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本睡眠学会専門医、日本禁煙学会認定指導医。健康を維持するためには質の良い「眠り」が必要との信念のもと、睡眠時無呼吸や睡眠負債など「睡眠医療」に力を入れている。同院併設の「宇都宮スリープセンター」は、日本睡眠学会認定施設(睡眠障害の医療A認定)で、約700人がCPAP(鼻マスク)治療を受けている。診察の傍ら「鼻と睡眠」や「睡眠改善」について講演やセミナーを積極的に行う。テレビ番組の医療監修のほか、メディアへの出演多数。

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