数学力=ビジネス数学力と勘違いしていませんか ランキングを読み解くための「ざっくり計算力」
簡単な逆算から、2011年の管理職の母数は約1360人(64人÷4.7%)、2021年の母数は約1万4800人(5506人÷37.1%)であることがわかります。つまり、母数の対象者が大きく変わったことが推察されるのです。
比較のカギは「apple to apple」といわれ、同じ前提の数字とするのが基本ですが、このケースではそれが微妙なのです。
ちなみに、2位の明治安田生命保険の管理職の母数を計算すると、2011年は94人÷2.3%≒約4100人、2021年は407人÷33.3%=約1220人となります。こちらも対象となる母数が変わっている可能性はありそうです。
ビジネス数学力でランキングを読み解く②
次に全体を見てみましょう。1つ気になるのは、女性管理職数のバラツキです。1位のイオンは5506人、それに対して3位に入ったリクルートホールディングスは50社のなかでも最小の8人です。
簡単な逆算から、リクルートホールディングスの管理職の母数は約19人(8人÷42.1%)であることがわかります。8位のウィルも母数は約30人(14人÷46.7%)、12位のヱスビー食品は約94人(16人÷17%)です。
イオン以外で母数が多いのは、10位のりそなホールディングスの約4410人(1307人÷29.2%)、12位アサヒグループホールディングスの約7900人(1669人÷21.1%)、15位三井住友トラスト・ホールディングスの約6250人(1683人÷26.9%)などです。
母数が2桁の企業と4桁以上の企業を同じランキング上で比べることが妥当なのかという議論はあってしかるべきでしょう。もちろん、このランキングは貴重な資料ではあるのですが、それを読み解く際には、やはり簡単な計算で構わないので、分析の前提を確認すべきなのです。
筆者の経験でいえば、ビジネス数学の中でも、この前提の妥当性の確認は、ビジネスパーソンが価値を出すうえで大きな比重を占めます。
ベースとなる数学の素養を身に付けたうえで、こうしたポイントに注意を向けたいものです。先述したように、ビジネス数学は、単なる数学力ではなく、実は国語力が大きな比重を占める点は意識したいものです。
定性面のチェックを加えることも、ビジネス数学力を用いた分析をさらに立体的なものにします。
たとえばこのランキングに入っているワコールホールディングスやユニ・チャーム、資生堂などは、女性管理職が実際に増えていることは歓迎されるべきでしょうが、商材の特性を考えると、上位の金融機関以上に多くてしかるべきという考え方もあるでしょう。そうした違和感を大事にすることもビジネスでのバリューにつながります。
こうしたビジネス数学のコツを知っておくことは、「正しい意思決定をする」「騙されにくくなる」「頭のいい人になめられなくなる」など多大な効果をもたらします。高校までの純粋な数学を苦手としていた人でも十分に身に付けられる素養であると明記しましょう。
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