「年末の株高は不変」でも頭に入れておくべきこと 重要統計には「来年の株価下振れの兆し」がある
もちろん、物価上昇率は低下したとはいえまだ高率だし、連銀の利上げも続くだろう。一部でささやかれている、今年内の再利下げ観測は行きすぎだ。今後の経済指標も、回復を示すものばかりではないだろう。そのため、アメリカ株(それにつれて日本株も)の短期的な揺り戻しはしばしば起こりそうだが、年内の大きな流れは株高方向だと考える。
来年の株価下振れの兆しは出てきている
ただし、これも前述のように、来年はいったん主要国の株価が大きく下振れする局面が現れると見込む。その主要因は、アメリカ連銀の利上げが今後も続くことで、金融引き締めの累積効果が時差を伴って生じ、ようやく来年にアメリカの景気と企業業績の悪化が本格化することだ。
年内はアメリカの個人消費や世界の設備投資・建設投資が上振れするリスクがある、と6月6日付の当コラム「日米の株価がもう一段上昇しそうな『2つの理由』」で指摘したが、その景気上振れの「平常状態」への回帰(景気の下押し)も来年に生じそうだ。
実は、景気が悪化していくという兆しは、突然あらわになるわけではなく、かなり前から見て取れることが多い(突発的なショックによる景気後退を除く)。それをアメリカの雇用市場で2点指摘したい。アメリカの雇用市場をここで取り上げるのは、賃金の動向が、世界の経済全体の2割弱を占める同国の個人消費を左右するからだ。
その1つは、アメリカでの企業の求人数が今年3月の1186万人でピークをつけ、直近の6月分では1070万人に減少していることだ。1000万人を超える求人数はまだかなりの高水準であって、今年中の雇用市場の悪化やそれによる個人消費の後退を心配するのは早すぎる。ただ、来年については警戒したほうがよいのだろう。
もう1つは、雇用統計における週労働時間が今年3月から7月まで6カ月連続で前年比マイナスに陥っていることだ。これは、コロナ禍後の景気回復の想定外の速さによって人手不足となった事業者が、求人を急増させ人集めに走ったものの、従業員数を増やしたほどには仕事量が増加してはおらず、それが労働時間の減少に表れていると解釈できる。
こうした事態がすぐに雇用削減につながるとは見込みがたいが、労働時間の減少が今後も継続すれば、遅れて企業が雇用を抑制するものと懸念される。少し前にアメリカのIT大手企業が来年の人員抑制計画を次々と公表し不安視されたが、こうしたデータを踏まえれば、その意味合いが理解できよう。
まだ株価下落に備える必要は薄いだろうが、今年末にかけて期待される株価上昇を楽しみつつも、心の中では来年の下落相場への「覚悟」を整えることも重要だろう。
(当記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)
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