「年末の株高は不変」でも頭に入れておくべきこと 重要統計には「来年の株価下振れの兆し」がある

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1つは、基礎的な要因から、株価や為替相場などの適正水準が求められるという考え方だ(それはもしかすると幻想かもしれないが)。そして、その適正水準が、先行きどのように推移していくかを分析する。

ファンダメンタルズ分析は、株価の先行きを展望する場合、PER(株価収益率)だけで考えるわけではないが、一例としてPERを取り上げよう。ある個別銘柄のPERが、ある倍率を中心としながら、長期的に上下動してきたとする。その中心となる値をPERの適正水準とみなし、それに予想EPS(予想1株当たり利益)をかけ算して株価の適正水準を得る、といったようなやり方はあるだろう。そして先行き、PERがその適正水準のままで、EPSが増加していけば、株価の適正水準はEPSと並行的に上がっていくことになる。

もう1つは、そうして得られた市況の適正水準に対して、現実の市況が上や下に離れているのかどうかを示す、ということだ。前述の例で言えば、PERの適正水準から実際のPERが大いに高ければ買われすぎ、大きく低ければ売られすぎ、と判断される。

予測のカギは「諸要因が変わるかどうか」

すると、筆者が見通しを変えるかどうかは、主として適正水準の現状や将来が変わるかどうかによる。景気や企業収益に想定外の大きな変化が起これば、当然、市場見通しは迅速に変えるべきだ。

しかし、筆者として想定している適正水準の位置や将来の動きの予想が変わらず、市況が上がったり下がったりしているだけであれば、見通しを変える必要はない。適正水準がまったく変化していないのに、市況が上がり続ければ、それは買われすぎが進行しているわけで、買われすぎは「いずれ」解消され、現実の市況が適正水準に戻ると考えるためだ(ただし、その「いずれ」が何日後、何週間後、あるいは何カ月後なのかは、よくわからない)。

ということは、見通しを変えるかどうかのカギは、市況の動向ではなく、自身が適正水準を得るために踏まえたファンダメンタルズの諸要因が、変わるかどうかによる。

もちろん、事前にすべての諸要因を正しく見通せるわけがない。時間が進むにつれて、景気も政治動向も国際情勢も変化し、想定しなかったことも多く発生する。それでも、想定外の変化が全体を大きく揺るがすものではないと判断できたり、それが一時的なものであっていずれ終息すると判断したりするのなら、やはり市場見通しを変更しないことになる。

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