「年末の株高は不変」でも頭に入れておくべきこと 重要統計には「来年の株価下振れの兆し」がある

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市況が大きく上昇すると「なぜ馬渕さんは見通しを上方修正しないのですか」、逆に市況が大きく下落すると「なぜ下方修正しないのですか」というご質問をよくいただくが、適正水準に大きな変化がなく、市況が上下に振れているだけであれば、見通しを変える必要を感じない、というだけだ。少し余計なことを長々と書いたが、今後の当コラムをお読みいただくうえで、背景に述べたような思想がある、と踏まえていただければ幸いだ。

年内は、いたずらな悲観論が剥落へ

さて、今年から来年にかけての、当方による主要国の株価シナリオのおさらいだが、まずこれから今年末への株価上昇については、とくに6月までのアメリカの株価は売られすぎだった。一方、世界の実体経済や企業収益は、とくによくはないが悪くもない「まあまあそこそこ」だ。そのため、「株式市場における過度の悲観が薄らいできているし、さらに薄らぐだろう」という展望による。

足元では日米両国などでの4~6月期の企業決算発表が峠を越してきている。発表が先行したアメリカでは、S&P500社ベースで、EPSの前年比が6.4%増で着地している。

これは高率の増益だとは言いがたいものの、今年3月末時点でのアナリスト予想の平均値(ファクトセット調べ)は5.5%増益だったので、堅調な結果だったといえる。日本では、同期のTOPIX(東証株価指数)ベースで0.4%とギリギリの増益だが、こちらも決算発表前の減益見通しを覆している。

6月中旬までアメリカの株式市場が悲観の行きすぎになったのは、「インフレ懸念」「利上げ懸念」「景気悪化懸念」の「懸念詰め合わせセット」によるものだった。だが、原油や銅などの国際商品市況が落ち着いた動きとなっているうえ、10日に公表された7月分の同国の消費者物価が前年比8.5%と前月の同9.1%から鈍化するなど、インフレ懸念の沈静化が見られる。

このため、市場には「連銀の利上げもいたずらに加速はしないだろう」との見解が広がっている。景気も、5日発表の雇用統計で、7月の非農業部門雇用者数が前月比52.8万人も増加となるなど、景気失速がすでに始まっているとの悲観論も後退している。

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