介護の負担軽減「訪問診療」メリットとデメリット 条件は「患者ひとりでの通院が困難な場合」

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ただし、何事にも良い面と悪い面があるように、訪問診療にもデメリットは存在します。診療内容の面では、あくまでも在宅で可能な医療行為に限られるためMRIや内視鏡などの精密検査は行えず、急変時も検査や投薬等の対応が十分に行えない場合があります。また、入院や施設入所に比べれば日々の介護負担は避けられません。したがって訪問診療のみに頼らず、今まで通っていた専門科の受診を可能な範囲で行うほか、デイサービスや訪問介護・訪問看護などを同時に導入するといいでしょう。訪問診療はあくまで負担軽減の形であり、家族の負担がゼロになるわけではないことには注意が必要です。

訪問診療で発生するトラブル

また自宅という、病院内のように周りの目がなく閉じられた診療の場ではトラブルが発生するケースもごく一部ながらあります。医師側の問題としては満足のいかない医療提供(横柄な態度や不十分な診察)、患者側の問題としては本人やその家族からの医療スタッフへの暴言・暴力があげられます。いずれも患者側が望む医療と医療者側が提供する医療のすれ違いが原因であることが多く、不安や心配は小さなうちに伝えましょう。直接相談が難しい場合は、医療安全相談センターという相談窓口も各所に設置されています。

それでも、訪問診療の導入には大きなメリットがあります。本人が住み慣れた自宅で、家族と共に療養でき、面会や食事の制限もなく余生を自分らしく過ごすことができます。また診療当日も、決まった日時に自宅で待機していればよいため、交通機関での移動の負担や病院での待ち時間を避けられ、さらに通院による感染症の心配もなく、季節や天候を問わず医療を受けられます。また自宅で比較的ゆっくりと医師や看護師に話ができるため、医療者側も患者本人や家族の希望を叶えやすくなります。

訪問診療の普及はまだまだ発展途上ですが、一般に広く知られることで医療機関・患者家族双方のニーズが明らかになり、より風通しの良い診療ができる分野だと感じています。

患者本人と介護者双方の負担を減らし、お互いに心の余裕を持って自宅で穏やかに過ごすためにも、まだ頑張れると背負いすぎず、通院を負担に感じている方は、ぜひ一度導入を検討してみてはいかがでしょうか。

上原 桃子 医師・産業医

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うえはら ももこ / Momoko Uehara

横浜市立大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構理事。身体とこころの健康、未病の活動に尽力し、健康経営に関する医療系書籍の編集にも関わっている。医師と患者のコミュニケーションを医療関係者、患者双方の視点から見つめ直すことを課題とし、とくに働く女性のライフスタイルについて提案・貢献することを目指している。

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