フランスで今起きている「働かない若者」問題 カフェも美容院もパン屋も人手不足で大変

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大手自動車会社ルノーでエンジニア兼プロジェクトマネージャーをしているクリスチャンは、ロックダウン期間中、まず大きな衝撃を受けました。それまでは、毎日早起きしてオフィスに行ったり、工場に行ったり、安い部品屋を探しに世界中を飛び回るのが、彼の日常でした。

ロックダウンが始まってすぐは、家の中で自分のスペースを確保するのが大変でした。子供が3人(ほとんどが10代)いて、妻は教師で週のうち何日かは早めに帰宅するので、新しいリズムをつかむのに苦労したと言います。また、きちんとした服を着ることがないため、家と仕事の間に明確な区別がないことにも慣れませんでした。

会社を辞め、バイクの修理会社を立ち上げ

ところが、クリスチャンは少しずつ、昼休みに庭仕事ができること、通勤に時間がかかったり、渋滞の中を帰ってくる必要のない事実を楽しむようになりました。また、彼はコロナ前の働き方を振り返り、仕事と会社のために時間を割きすぎた、とも考えるように。給料がよくても、会社や仕事に時間を奪われ、疲れ切って帰ってきて、子供の面倒をみる時間がほとんどないのはどうなんだ、と。

最近、クリスチャンはある条件で会社を辞めないかと言われました。定年までにはまだ数年ありましたが、退職金をもらい、古い車やバイクの修理の会社を立ち上げることに決めたといいます。

それからというもの、時間の使い方が大きく変わり、特に自分の時間を楽しみたいと考えるようになりました。もう一度、ベースを弾きたいし、新たな勉強をしたいともずっと思っていました。盆栽好きな彼は、盆栽についてももっと知りたいといいます。

こうした中、クリスチャンは自分と、子供たちの人生の向き合い方に大きな「違い」があることに気がつきました。パンデミック、ウクライナ戦争、テロ、環境問題などさまざまな困難によって将来が見通しづらくなっている中、若者はポジティブな希望を見出せなくなっているのです。

25歳のエリックは、「近い将来どうなるのかわからないのに、なぜ努力するのだろう。あまり深く考えず、日々を生きる方が楽だ」と話します。お金を稼ぐことは、もう重要なことではない様子。仕事で大切なのは、気軽に帰ることができること、旅に出られること、必要最低限の給料で、時間の融通が利くこと、だといいます。

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