歴史的な食品値上げなのにエンゲル係数低下の謎 今後「家計の苦しさ」は過去最高となるのか

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以上により、コロナ禍の反動による「消費支出」の増加と「食料費」の実質消費の減少により、2021年以降のエンゲル係数は低下傾向にあることがわかった。しかし、いずれも一時的な要因と考えられ、今後はエンゲル係数が上昇するリスクが大きいだろう。

この先さらなる値上げがありそうだ

食品値上げについてはこの先一段と進む可能性が高い。冒頭に述べた帝国データバンクの調査では、2022年に値上げが予定されている品目の6割程度が7月以降のことであり、本格的な価格上昇はこれからだ。さらに、円安などの影響を受けて、今後新たに値上げが決定される品目も多く存在するだろう。「実質的な」食料費の減少で値上げの影響をカバーすることにも限界が来るとみられる。

エンゲル係数の解釈をめぐってはさまざまな議論があるが、食品値上げに伴う「食料費」の増加による上昇であれば、家計の生活水準の低下を示しているといえるだろう。今後は生活水準の低下によって個人消費に負の影響が及ぶことは不可避であると考えられ、国内景気の悪化が懸念される。

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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