次に、分子である「食料費」についても、2021年以降ではエンゲル係数を押し下げる方向に寄与していた(前掲グラフ)。最近の食品値上げの流れを考えると、やや違和感のある結果である。
「食料費」の状況については、「名目消費」「実質消費」「価格」に分けてそれぞれ比べると、状況が整理できる。
興味深いことに、「食料費」の「価格」は2021年途中から上昇しているものの、「実質消費」は減少していることがわかる。その結果「名目消費」が伸び悩んでいるという格好だ。すなわち、「価格」は食品値上げのイメージどおり上昇しているが、数量ベースの消費量を示す「実質消費」が減少しており、「名目消費」が伸びていないのである。
実質消費の減少は長続きしない
「実質消費」の減少は、購入する食料の「量」が減少していることを示している。家計が食べる「量」を趨勢的に減らしているというのはやや不可解な動きである。例えばコロナ後のダイエットなのか、食料費の節約のために「カロリー効率」の高い食品、つまり腹持ちのいい食材にシフトしているのか、といったことが考えられる。
ほかには、コロナ禍における巣ごもり消費、つまり買い溜めによりストックされていた食料が積極的に活用され、それが一時的に購入数量の減少につながった可能性も考えられる。世界的に製造業や小売業での「在庫調整」が注目を集める中、家計の「在庫調整」も進んでいるのかもしれない。この仮説が正しければ、「在庫調整」の一巡後に「食料費」が増加するシナリオも否定できない。
いずれにせよ、コロナ禍という特殊な状況が影響したのであろう。食料費の実質消費の減少は常識的に考えて長続きしない可能性が高い。
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