今、世界が見落としている新たな脅威は何か? これは、第51回ミュンヘン安全保障会議(MSC、2月6~8日開催)に集う指導者、専門家やメディアにとって重要な問いである。
1年前、シリアにおける戦争とウクライナにおける危機は国際社会を悩ます問題だった。しかし、昨年のMSC参加者の多くは、事態の本当の重大さをしっかりと把握できてはいなかった。
ほんの数カ月後、両危機の急激な拡大と地域化、そしてそれに伴う他の地域での展開を見た多くの人々が、2014年を国際情勢における非平穏と混乱の時代の幕開けとして位置づけるに至った。
現行の集団安全保障体制における数多くの欠点が明らかになった。ハビエル・ソラナ元NATO(北大西洋条約機構)事務総長は最近こう語った。「私たちは幻想の中に生きていた。単極の世界秩序を多極へと移行することが、平和的に、きちんと、確実に進むであろうと世界は長年にわたり信じてきた。(中略)私たちは完全に間違っていた」。
最悪の場合、安全保障の複雑さをあいまいにする
その幻想では、幸運にも想像力が欠如していた。歴史の「正しい」部分と「間違った」部分を分けること、もしくは19世紀的なやり方を20世紀に用いることを批判するのはすばらしいように響くかもしれない。しかし、そのような議論は単なる修辞的技巧にすぎず、最悪の場合、理解と対策が必要な今日の安全保障の複雑さをあいまいにしてしまう。
「戦争」は欧州に戻った。汎欧州安全保障の基本原則が崩壊しつつあり、冷戦以降ロシアと欧米が積み重ねてきた関係改善も同様である。さらに、ここ数十年で最も過激で不安定なアラブ世界がさらに分裂する兆しを見せており、互いに刺激し競い合う数々の過激なジハード集団は、その怒りを再び欧米に向けている。アジア太平洋地域でも、安全はいまだ確かなものではない。