イスラム国武装勢力による日本人人質殺害により、日本の安全保障政策はどのような影響を受けるのだろうか。スティムソン・センター主任研究員の辰巳由紀氏に話を聞いた。辰巳氏は東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職にある。専門は日本の防衛政策および国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策である。
なぜ安倍内閣の支持率は高いのか
──「イスラム国」武装勢力による人質殺害事件以降、安倍晋三首相の支持率は上昇した。外交的手腕に関しても、支持は強いようだ。
とくに驚くことではない。多くの日本人は、日本が国際的により大きな役割を果たせば、それに伴うリスクが高まるということを理解している。
また、日本が一定の信条を表すことも重要だと考えている。安倍首相は、日本は決してテロリストの圧力に屈しないと宣言し、身代金を払うことも拒否した。国民の多くは、首相がこのように断固とした姿勢をとったことを支持した。
──欧米メディアでは、人質殺害事件が日本の「転換点」となると主張するような記事が、数多く見られた。日本は憲法9条の反対方向へと向く間際にあるだろう、と。この種の分析に根拠があると思うか。
そうは思えない。今回の人質殺害事件が日本を「転換点」に動かすことはない。ただし、この事件を機に、国民が、安全保障法制の改正が自衛隊にどう影響するのかをいっそう心配し、政府のさらなる説明責任を求めるだろう。
この種の問題は議論が専門的すぎるため、一般の人々はもちろん、政策分野においてさえ、ごくわずかの人々しか理解できていない。これまで安倍首相は広義の政策の意味において、おおまかに説明してきたのは事実。しかしその彼ですら、具体的な説明はしていない。つまり自衛隊に何ができ、何ができないのかという説明をしていない。
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