人質殺害事件後、内閣支持率が上がったワケ 毅然とした態度が国民から高く評価された

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──安全保障法制の議論は、日米防衛ガイドラインの見直しとどう重なるか。

当初、ワシントンはガイドラインの改正を冷やかに見ていた。米国政府当局は、日本がより大きな役割と責任を引き受ける意志があるのか、確信が持てなかったからだ。

日本は、現行のガイドラインでは、高まりつつある中国の軍事力と活動を反映していないとの懸念から、作業に着手しようと考えた。しかし米国は東京を満足させるという理由だけで、議論に参加するつもりはなかった。ワシントンは時間をかけ、日本の真剣度を慎重に判断した。米国にとっても、尖閣諸島をめぐる衝突時に、日本への援助を保証する以上の何かが必要だったためだ。

米国は徐々に、集団的自衛権の限定的行使を含め、自衛隊活動により幅広い範囲と領域を許可する法律改正の続行に関し、日本は真剣であると確信した。

ガイドラインの改正は昨年末までに完成することになっていたが、日本は、想定される法的改正が成立するまでの延期を提案した。そうすれば、改正したガイドラインに、自衛隊活動に関する拡大化した法的範囲を組み込むことができるからだ。

しかし、非常に多くのことが、最終的な立法に依存している。米政府は結局、驚くほど満足するか、がっかりするかのいずれかだ。新しいガイドラインは公明党の賛成を得る必要があることも心に留めておかねばならない。

日米の共同化が進展していく

──米国は、日米間の戦場情報の一本化した流れを望んでいると思う。

米国の視点からすると、長い目でみた真の最終段階は、連合部隊をつくることで、日米の軍隊間の壁を打ち破るというものだ。しかし今のところ連合部隊とすることは困難であり、合同に行うのは、ミサイル防衛など、特定の範囲に限られるだろう。

米国は、日本の自衛隊が前線での戦闘に加わることを期待していない。期待しているのは、日本があらゆる種類の後方支援や情報提供を、複雑な事前承認などなしでできるようになることだ。

3月11日の東日本大震災を受け、米国と日本は、核問題と人道援助に共に取り組む二国間調整所を設立した。こうしたやり方が、2つの軍隊の将来計画のすり合わせや作戦調整のための、最も現実的なモデルかもしれない。

(英文を邦訳して掲載)

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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