人質殺害事件後、内閣支持率が上がったワケ 毅然とした態度が国民から高く評価された

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──公明党と自民党の相違点とは?

意見が食い違っている主な点は、自衛隊が行動するための、いわゆる「グレーゾーン」についての考え方だ。一般的に言えば、グレーゾーンは「日本への組織的な攻撃の形をまだ取っていないが、交戦状態となる可能性がある状態」を指す。政府は主として、尖閣諸島と東シナ海周辺で高まっている緊張関係を含めたシナリオを念頭に置いている。

しかし現実的には、平時から、戦争の可能性が高まっているグレーゾーン、そしてその後の不測の事態への段階的拡大が、非常に急速に起こる可能性が高い。

自民党と公明党は、自衛隊が行動できる範囲を明確にし、敵国となる可能性が高い国との間でグレーゾーンの事態が起きた場合、不注意に戦闘をエスカレートさせないよう目指すはずだ。

グレーゾーンに関する議論に注目しているのは、中国人だけではない。米国もまた、日本の防衛同盟国として、大いに関心を持っている。そしてこのことは、集団的自衛権の限定的な行使という新政策の下で、どれだけの情報交換と緊急時対応策、そして組織的な作戦が、日米の軍隊間で許可されるのかについて、非常に複雑な議論を提起するはずだ。

かえって海外に自衛隊を送りにくくなった

──安倍首相はペルシャ湾への自衛隊の派遣を望んでいるようだが。

首相は1990年代初めの第1次湾岸戦争後に日本が従事したような掃海作業を念頭に置いているのだと思う。当時、戦闘はすべて終わっていたが、まだ機雷を排除する必要があった。そこで海上自衛隊を派遣した。

ペルシャ湾の掃海作業のような活動は、以前は現行法の解釈の微調整で許可されたが、現在議論されている新法が法律になれば、許可されなくなるかもしれない。

最近の議論の根本にある論点は、許可された自衛隊活動の範囲を拡大するというものだ。過去に許可された掃海作業のような活動は、現在も許可されるのが当然だが、集団的自衛権の行使に関する最近の議論は、日本周辺のグレーゾーンに焦点をあててきたため、今ではペルシャ湾での平時の掃海作業の合法性に、疑問が投げかけられる。

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