しかし、その後は見直し傾向が進み、下火になった感はあるのだが、そうしたなかで大阪市は2014年から学校選択制を全市で採用するようになった。ご存じのように、大阪は全国で最も「維新」勢力が強いところで、現状では最も極端な形での新自由主義的教育政策が採られている自治体だと位置づけることができる。
その大阪で、今何が起こっているのか。それを象徴するのが、次に挙げる図である。
学校選択制が招いた「分断」
これは、大阪市内に24ある区のうちの1つ西成区に関して、学校選択制導入前後での、6つある公立中学校のテスト成績の変化を図示したものである。数値は全国学力・学習状況調査の結果を偏差値に換算したものである。
西成区は、大阪市のなかでも最も社会経済的にきびしい住民が多いとされる区である。左側の2014年の数値(偏差値)を見ると、50を超える学校が1つもないことがわかる。
すなわち、区内のすべての公立中学校は、全国平均を超える成績をもともと持っていなかったということである。そして、右側が2019年の結果である。3校が右肩上がりの傾向を示し、残る3校の成績が下降しているという結果が見てとれよう。
注目していただきたいのは、( )内の数値である。これは、その年度に「校区外から入学を希望した者」の数を表している。逆に、「校区外の他の中学校を希望した者」の数も知りたいところであるが、その数は公表されていないためわからない。
いずれにしても、( )内の数値を見ると、成績が向上した学校では2桁となっており、下降した学校では1桁(ほとんど存在しない)ということがわかる。
すなわち、「人気校」の成績は押し並べて向上し、「不人気校」の成績が押し並べて悪化したということである。最も不人気校であるF校の偏差値は、44ポイント台となっている。きわめて低い数値である。
つまり、この図に示されているのは、学校選択制という制度の導入が、5年間で公立中学校の二極化をものの見事に招来させたという事実である。そして、見逃してはならないのは、西成は大阪で最もしんどい地域の1つであるということである。
公立学校の教師たちが一致団結して子どもたちの学力や進路を保障しようとしてきた土地柄であるにもかかわらず、教育政策(教育改革)がそれとは正反対の「分断」をもたらしているという事実。
皆さんはこの実態をどう見るだろうか。
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