小野田は、モンスター扱いするのではなく、まずは徹底的に話し合い、親の願いや思いを理解することが必要だと説くが、その苦労は半端なものではないと聞く。
デパートやメーカーにおけるクレーム処理の実例に学びながら、教育委員会や研究者が保護者対応のマニュアルをつくり、学校現場に配布したり、教員研修の場でトレーニングを実施したりという対策がとられている。
ペアレントクラシーのもとで学校がサービス業化
2013年に文科省がまとめた「教職員のメンタルヘルス対策について」という調査によると、校長が感じるストレスが最も高いものが「学校経営」で74%、「保護者対応」はそれに次ぐ2位で65%となっている。
また、同じく文科省が2015年に実施した「小中学校教員に対する業務の負担感調査」では、「保護者や地域からの要望・苦情対応」(71%)という項目は、「国や教委からの調査対応」(87%)や「研修リポートや報告書の作成」(72%)と並んで高い数値をとる項目となっている。
今日、多くの教師、とりわけ若い教師たちが保護者対応に苦しめられている。実際に、それが元で教職を去ることを余儀なくされる事例も少なくないと言われている。
考えてみればわかるだろう。大学を出たばかりの新任教員が学級担任を任されたとする。まず、子どもたちの心をつかみ、まとまりのある学級をつくっていかなければならない。次に、授業の準備。小学校の先生であれば、毎日4から6校時、8から9の教科を教えなければならない。
それだけでも十分に大変である。すぐれた資質を持つ新任教師でも、アップアップの状態となることが予想される。そのうえでの保護者対応である。
年齢も上、経験も上、そのうえ消費者目線で来る保護者の期待に応えなければならないのである。理解のある保護者もいようが、そうではない保護者もいる。同僚や管理職のサポートがなければ、ふつうの若者には荷が重い仕事であることは容易に想像がつくだろう。
ペアレントクラシーのもとで、学校は、いいか悪いかは別としてサービス業化している。そして教師はある意味、「接客」に神経を集中し、顧客の要望に応えなければならない状況下に置かれるようになっているのである。
次に学力格差というトピックについて見てみよう。これは、私がこの20年間で最も力を入れ取り組んできた教育問題である。筆者らのグループが、「学力の二極化」という現象を見出したのが、今からちょうど20年前のことであった。
子どもたちの学力の「ふたこぶラクダ」化は、今や全国の小中学校で常態化しており、その背景に「家庭の二極化」があることもまた教育界の常識となっている。
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