誕生50周年「日本のカニカマ」が世界へ広がり ヘルシー志向で欧米、アジアを越えて中東にも
コロナ禍でも増えている日本の食品輸出。2021年は農林水産物の輸出額が初めて1兆円を超えたと話題になったが、その後も順調だ。
8月5日に農林水産省が発表した2022年1~6月(累計)の農林水産物の輸出額は6525億円(前年同期比13.1%増)となり、上半期として過去最高となった。品目別ではホタテ貝の約387億円がトップで、ウイスキー294億円、ソース混合調味料240億円、日本酒234億円などが続く。
そんな中、ふだんの食卓でなじみの深い食品の存在に気づいた。「練り製品」(かまぼこその他)である。2021年の輸出額は112億円あまりで過去最高となった。今年上半期も約62億円で前年同期比16.4%増と好調が続く。その象徴的存在が、かに風味かまぼこ「カニカマ」である。世界で愛されるカニカマの舞台裏を探ってみた。
輸出先の上位はアメリカや東アジア
財務省の貿易統計(2021年)によると、練り製品の輸出先(2021年=金額ベース)の上位は以下のとおりで、アメリカとアジア各国が上位を占めている。
① アメリカ37.7%
② 香港20.6%
③ 中国14.9%
④ 台湾 9.7%
⑤ 韓国 2.4%
輸出先は全部で33国・地域。意外な国がトップ10に顔を出している。中東のUAE(9位)とサウジアラビア(10位)である。政府の資料には、中東向けは「日本食レストランや高級寿司レストラン向けの寿司などに使用される高品質なカニカマを中心に需要」と記載されている。近年はオランダ(ロッテルダム港)経由で欧州各国への輸出も行われている。
もっとも、カニカマに関しては日本国内からの輸出だけでなく、海外の工場で生産して欧米やアジアなどに輸出しているケースもあり、世界での日本ブランドカニカマの消費金額は輸出総額を大きく上回る。
海外での人気の秘密はどこにあるのか。6月下旬に東京で開かれた「日本の食品輸出EXPO」に来ていた海外のバイヤーに話を聞いてみたところ、日本製のカニカマは、「ヘルシーで、高品質」「本物に近い味わい、繊細さがある」といった答えが返ってきた。確かに欧米でもカニカマは生産、販売されているが、やはり日本製は品質が違うということのようだ。
今年はカニカマが誕生してちょうど50周年になる。北陸の水産練り物メーカー・スギヨ(本社・石川県七尾市)が1972年、カニ風味かまぼこ「かにあし」を販売し、瞬く間に大ヒット商品となった。同社ホームページに「カニカマ誕生秘話」が、ショートムービーの形で紹介されている。
そもそもは人工クラゲの開発を目指していたが、もう一歩のところで挫折。しかし、この試作品開発がヒントになり、かまぼこを材料にしたカニカマが誕生した。ちなみにこのムービー「カニカマ氏、語る。」は、アジア最大級の国際短編映画祭の企業部門(応募687作品)で、人事採用につながる優秀作品を表彰するHRアワードにおいてノミネート5作品に選ばれた。中国語字幕バージョン、英語字幕バージョンもある。
「中国では歴史ある企業であることが非常に重要視され、信頼感につながるとのことで、世界初の商品を生み出した技術と歴史をわかりやすく、説得力を持って伝えるツールにしています」(スギヨ広報担当者)
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