誕生50周年「日本のカニカマ」が世界へ広がり ヘルシー志向で欧米、アジアを越えて中東にも
中国に向けた輸出を拡大しているスギヨだが、当初は言葉の壁や商慣習の違いなどハードルは高かった。しかも、同社の製品(「香り箱」の中国ブランド「海の香」=高級タイプ)は、現地で売られている中国産のカニカマの10倍超の価格だった。
「当初は値段に見合うだけの価値(品質)を伝えるのに苦労しました。そのため、輸入業者に任せきりにせず、社員が現地へ行って商談する“メーカー主導の市場開拓”を目指しました。新しい食べ方の提案もそのひとつ。それまでは火鍋の具材にされることが多かったのですが、マヨネーズをかけてバーナーで炙ることを回転寿司チェーンにご提案し、大手で採用していただきました」(スギヨ広報担当者)
中国をはじめ香港、東南アジアなどへの輸出拡大が認められ、スギヨは「平成29年度輸出に取り組む優良事業者表彰」で農林水産大臣賞を受賞している。苦労の甲斐が報われたということだ。
最大の消費市場はヨーロッパ
ところで、カニカマの世界の消費量はどれぐらいあるのだろうか。業界団体のレポートに記載された数値(2014年の業界紙推定)を見ると、年間40万トンで、内訳はヨーロッパ全体が約15万トン、アメリカ、中国、東南アジアが各5万トン。日本も5万トンとなっている。日本で生まれたカニカマの最大消費地はヨーロッパなのである。
そして、世界最大のカニカマ生産国はバルト3国のひとつリトアニアで、近海で多く獲れるスケトウダラを原料にして生産している。ビチュナイという企業が最大手。リトアニアはユダヤ人避難民を救った外交官の杉原千畝が赴任していた国である。日本企業が開発した製造装置を輸入して生産し、世界のトップシェアを誇るまでになったという。
そんなヨーロッパ市場でカニカマがもっとも消費されているのはフランス。現地ではSurimi(スリミ)と呼ばれ、サラダ、サンドウイッチ、手巻き寿司、グラタン、パスタ、キウイのファルシ(詰め物料理)などに使われているという。ただ、フランスには特殊な事情があるようだ。
「フランスは国産製品を優先する政策を取っているため、スーパーマーケットなどのローカル市場でのカニカマの取り扱いはフランス産のみという状況です。フランスに次いで消費量が多いスペインでは、スペイン産とフランス産が出回っています。逆にイタリア、ドイツ、ベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)はリトアニア産の取り扱いがほとんどです」(業界関係者)
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