サンリオ「第2のハローキティ」生み出す本気改革 ライバル続々登場、かわいいではもう勝てない

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業界屈指の人気キャラクター、ハローキティ
ハローキティは生誕から50年近く経っても業界屈指のキャラクター。サンリオは第2のキティを生み出すことができるか(撮影:今井康一)

第2のハローキティを生み出せるか。長年指摘されてきた課題に、サンリオがついに本腰を入れている。

キティは言わずもがな、サンリオが1974年に生んだキャラクターで、日本だけでなく世界的にブームを巻き起こした。アメリカのタイトルマックス社による累計収入ランキングでは、総収益800億ドルでポケモンに次ぐ歴代2位のレジェンドだ。3位のくまのプーさん(同750億ドル)、4位のミッキーマウス(同700億ドル)をも上回る。

欧米でキティブームが巻き起こったのは2000年代後半。歌手のレディー・ガガなど著名人も、熱心なファンとして知られている。海外のライセンスビジネス(顧客商品にキャラの使用権を与え一定のロイヤルティを得る好採算の形態)を大きく伸ばし、2013年度は売上高770億円、営業利益は210億円と好業績・高収益を謳歌していた。

しかし、ブームが去ると業績は減収減益が続いた。ライセンス事業におけるキティへの依存度は高く、巻き返しを図れないままコロナ禍が到来。2020年度は12期ぶりの最終赤字に転落した。

創業者・辻信太郎氏の孫である辻朋邦社長は2020年に就任すると、社内風土や組織、マーケティングなど全面的な構造改革を進めてきた。キティに次ぐニュースターを生み出すべく、キャラクタービジネスでも思い切った改革が始まっている。

ライバルが続々襲来、激戦市場に

「以前のキャラクター作りはプロダクトアウト型だった。これからはマーケットインの発想でいく」

社内改革のキーマン、中塚常務
中塚常務は社内改革のキーマンの1人。キャラクターをヒットさせるプロセスの強化に加え、教育分野での展開を強化するなど、「かわいい」だけでない価値を加える点が重要だと指摘する(記者撮影)

こう語るのは常務取締役の中塚亘氏。オリエンタルランドやボストン・コンサルティング・グループなどを経て2021年にサンリオに入社した。辻社長とともに経営改革にかかわるプロジェクトを統括してきた人物だ。

キャラクタービジネスをめぐる環境は激変している。以前のサンリオは店舗への商品展開がキャラクターのデビューという位置づけだった。しかし、今ではリアルの場にとどまらず、SNSやLINEスタンプ、動画、アニメ、ゲームなど、ユーザーはさまざまな場所でキャラクターに出会うようになった。「ちいかわ」「すみっコぐらし」など、強力なライバルも登場している。

もはやかわいいだけでは競争に勝てない。ではどうするか。中塚氏が強調するのが「デザインだけでなく、好きになってもらうプロセスまでコミットすること」だ。

その具体例の1つが現在進行中の「NEXT KAWAII PROJECT(ネクスト カワイイ プロジェクト)」。サンリオの次世代スターを生み出す社内横断プロジェクトで、キャラクター作りにファンを巻き込む試みだ。

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