ウクライナ侵攻が映す「新時代の情報戦」その正体 歴史的視点から「戦争プロパガンダ」を分析

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SNSなどをうまく駆使して情報戦を展開するウクライナのゼレンスキー大統領(写真:ブルームバーグ)
現代の戦争・紛争は、通常兵器による殲滅戦ではなく、情報戦・諜報戦、さらには報道やSNSを巻き込んだサイバー戦の様相が高まり、両方の要素をはらんだ「ハイブリッド戦」が主流と言われる。今回のロシアのウクライナ侵攻では、どのような情報戦・サイバー戦が展開されたのか。

ウクライナ紛争は世界規模で展開された新しい戦争

ロシアによるウクライナ侵攻は、第二次世界大戦以後ヨーロッパで起きた最悪の武力紛争であり、今後の国際社会のあり方に大きな影響を与えると考えられている。だが同時に、情報戦、プロパガンダの歴史において新しい時代の幕開けを示すかのような様相も呈している。

『GALAC』2022年9月号の特集は「狙え!世界のテレビ賞」「戦争報道の現在形」。本記事は同特集からの転載です(上の雑誌表紙画像をクリックするとブックウォーカーのページにジャンプします)

侵攻当初、ロシア政府が指摘したような敵前逃亡はしていないことを示すため、ウクライナのゼレンスキー大統領がSNSに投稿した動画には世界が注目した。

それは紛争当事国の大統領が明るく照らされた記者会見の壇上ではなく暗い市街地で、テレビ用ではなくネット用に、プロのテレビスタッフによる撮影ではなく自撮りで制作した映像だった。2021年8月、タリバンがアフガニスタンの首都カブールに攻め入った際、国外に亡命したガニ大統領との違いは鮮明だった。

一方、ロシアは侵攻開始以前から積極的にSNSを通して自国の主張を国外向けに展開した。親ロシア系のアカウントは「ウクライナに生物兵器研究施設がある」「同国の映像に登場するロシア侵攻の被害者は役者である」といったデマをさまざまな言語で拡散した。日本では在日ロシア大使館によるSNS投稿が話題となった。

これらは紛争当事国以外も含む、多くの国や地域の市民がプロパガンダの対象となり、間接的に紛争に巻き込まれる状況が生み出されたことを示す事例だ。ウクライナ紛争はSNSを活用したプロパガンダが紛争当事国双方によって世界規模で展開された新しい戦争である。

今回の紛争はプロパガンダ史においてどのように捉えることができるのか。戦争と放送の関係においてどのような意味を持つのか、歴史的視点から考えてみたい。

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