究極の道具「VAIO Z」が向かう先とは? 「質」を「量」につなげられるか

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VAIOを企画・開発する側からの、新製品に対する発信メッセージは、多くの媒体を通じて発表と同時に多く出ており、ここではその詳細は割愛する。

VAIO Zはソニー時代には、多種多様なモバイルパソコンラインナップの中で、ミドルクラスの製品として存在していたVAIO Fit Aの構造を踏襲しつつも、Windowsモバイルパソコンに求められる全ての機能を満たし、13.3インチクラスでもっともパワフルで、もっとも長時間のバッテリ駆動を可能にした王道とも言えるタブレット型/ノート型両用のパソコンだ。

VAIO Z Canvasのこだわり

一方、VAIO Z Canvasは、映像クリエイターやフォトグラファー、イラストレーターなどが、どんな場所でも妥協なく創作に没入できるクリエイティブツールとして作られた、いわばクリエイター向けスペシャルとも言うべきタブレット型パソコンである。

ここで通常ならば、各製品の素晴らしいスペックや開発の苦労話が並ぶところだが、あえて先に感想を書いておきたい。なぜなら、新しいVAIOは2モデルともに、使用感を高めるという目的を先に立て、ユーザー体験を高めるための商品企画をしているためだ。ハードウェア仕様は、そうした目的を達成するための道具でしかない。そんな当たり前の事を、あらためて思い出させる製品に仕上がっている。製品開発が終盤に差し掛かった頃、実際に製品を開発している方々と話をしつつ、製品に触れてそんなことを真っ先に感じた。

たとえばVAIO Z Canvas。この製品には4つのプロセッサコアを持つ高性能プロセッサが搭載されている(一般的なタブレット型パソコンのコアは2個)。そのために様々な工夫が施され、タブレットとしての軽快さと性能を両立させている。クラムシェル型の一般的なパソコンの形をしているVAIO Zの方が高性能なプロセッサを搭載しやすそうなのに、なぜVAIO Z Canvasには4コアなのだろう?

それはクリエイターが使うアプリケーションで、創作のジャマになる応答遅れを徹底的に排除するためだ。画面上の仮想キャンバスにペンで書き込むと、多様なエフェクトを同時に使っていても、応答遅れなしに画面上に書き込みの結果が反映される。

ペン入力にはN-Trigという方式を採用しているが、これも画面表示とカバー面の間にある厚みに起因する視差(見る角度によって変化するペン先の位置と実際に画面上で認識される点の差)を最小化してほしいというクリエイターの要望に応えたものだ。同方式は他社も採用しているが、単純な視差の最小化だけでなく、実際の使用時にズレがなくなるよう徹底したチューニングが行われている。

もちろん、輝度ごとのホワイトバランスのズレや色再現域といった、ディスプレイ性能や個体差に対する要求にも応えるようディスプレイの選定や調整のプロセスが見直されている。

その名の通り、電子的なキャンバスとして、より良いフィーリングを引き出すことに特化しているのだ。だからこその高性能であったり、基盤小型化、高効率の排熱技術などだが、それらはクリエイターのニーズに応じてVAIOの設計チーム選んだ選択肢でしかない。

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