究極の道具「VAIO Z」が向かう先とは? 「質」を「量」につなげられるか
実はこのVAIO Z Canvasが、試作機として世に紹介された頃、フォトグラファーやイラストレータ中心にヒアリングが行われていることを聞いて、何人かの著名なアニメクリエイターに紹介した。
今後、VAIO Z Canvasの活用事例として登場する可能性もあるので、ここではあえて名前を出さないが、パソコンマニアではない道具としてタブレット型パソコンに触れている方々が、皆一様にそのフィーリングの良さに感動していたことはお伝えしておきたい。
クリエイター向けツールとしてのVAIO Z Canvasなのだから、それ以上の技術要件について批評するのは無粋な話だ。
新会社の価値の本質が問われるVAIO Z
VAIO Z Canvasは、ソニー時代には成立しなかったかもしれない、ニッチを狙って研ぎ澄ましたスペシャルモデルであり、VAIOが目指している理想に近付くためのアプローチを端的に表す製品といえる。これは、すべての人にとって最適というわけではないと思う。その代わりに、ある属性の人たちにとっては最高の道具となっている。
そうした意味では、VAIOが、コンシューマパソコンユーザーの心をどう引っかき回すことができるかは、クラムシェル型でありながら、ディスプレイを折りたたんでタブレット型としても使えるVAIO Zこそが、同社の持つ可能性を示す製品でなければならない。VAIO Z Canvasのような特別なモデルではなく、どんな用途にも柔軟に適応する商品で独自性を出さねばならないからだ。
しかし、ほぼ完成版となった試作機を使った感覚では、こだわるオーナーがパソコンに求めるであろう細かな配慮が、”ごく当たり前に”施されていた。”ごく当たり前に”と感じるのは、ことさらに性能や機能を訴求するのではなく、自然に違いを感じられるようさり気なく盛り込まれているからだ。
たとえば、ディスプレイの質。スペシャルモデルであるVAIO Z Canvasほどの調整は入っていないが、パッと見て色温度が適切に選ばれており、ソニー時代のVAIOに多かった青みが強いディスプレイではなくなっている。色再現域も含め、当たり前に見えるべき映像となるよう吟味されていた。言い換えれば、そうした配慮がおこなれているノートパソコンは少ない。
キーボードの質、打鍵感や音についての配慮もそうだ。パソコンを使う意味とは何か?さらにクラムシェル型のノートPCを使うのは何故か?キーボードによるテキスト入力の効率が高いからに他ならない。単にネット上のサービスを見るだけの受け身の使い方ならば、パソコンである必要はない。だからこそ、そこにこだわり、気持ちよい打鍵感を実現しながらも、どんな場所でキーボードを叩いていても耳障りな周波数帯の音が出にくいようにしてある。
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