中国BYDを侮る人は大波乱の条件をわかってない 日本参入、ゲームチェンジの歴史は繰り返すか

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SUV「ATTO 3」(写真:BYDニュースリリースより)
「ATTO 3」の内装(写真:BYDニュースリリースより)

2022年のメイド・イン・チャイナの乗用車は性能と評判という観点で言えば1970年の日本車と似ています。こういうと中国の技術者の方は大いに不満を感じるかもしれません。一方で日本の消費者はそれを過大評価だと感じると思います。その相反する評価こそが1970年の日本車の評判そのものです。

BYDの電気自動車は実は現時点で日本のバスのEV市場で70%のシェアを誇ります。つまり業務用ユースでみれば性能は十分に高い。しかし業務用で評判の高いメーカーが一般向け市場でシェアを獲るのは意外と簡単ではありません。ここは、これから先BYDジャパンが2~3年かけて苦戦するポイントとなります。

実はメイド・イン・ジャパンの優秀な製品の売り込みに関して、私も遠い昔、コンサルタントとして苦しんだ経験を持っています。1980年代に日本の白物家電が性能はいいのにアメリカ市場、特に南部の保守的なエリアでなぜか売れない。それで調べてみたのです。

対象の製品は洗濯機でしたが、市場調査をしてみるとアメリカ南部の消費者のニーズは「洗濯機がよく壊れる」という点にいちばんの不満がありました。だったらそれほど壊れない日本メーカーの洗濯機を買うべきだと私は思ったのですが、驚いたことに現地での消費者ニーズはちょっと違うのです。

アメリカ人は洗濯機がよく壊れること自体を前提条件だと考えているので、壊れるか壊れないかではなく、もし壊れた場合に24時間以内に修理を呼べるかどうかが最大の関心事だったのです。そこが当時現地で日本メーカーの洗濯機が売れなかった理由でした。

BYDが掲げた日本市場参入4つの障壁

BYDの記者発表では日本市場参入の際の障壁は「価格」「充電設備」「航続距離」「ラインナップ」の4つの不満だと分析しています。戦略としておそらくこの4点で日本車を上回るものを出して日本市場に挑戦してくるのだと考えられますが、その考えには日本製品がかつてアメリカ市場で苦戦したことと同じ落とし穴があるでしょう。

BYDの参入発表直後にたくさんの自動車専門家がBYDの乗用車に関する試乗レポートを書いていて、それによれば「基本スペックと運転性能どちらも競合する欧米のEVと遜色がない」と評価しています。

もし日本市場に投入する3車種の価格が先行するオーストラリアや中国市場での販売価格と同等レベルになると想定すると、かなり衝撃的に割安なEVになる可能性が高い。だからといってBYDは日本市場で成功するかというとそこには大きな消費者心理の落とし穴があるのです。

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