中国BYDを侮る人は大波乱の条件をわかってない 日本参入、ゲームチェンジの歴史は繰り返すか

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セダン「SEAL」(写真:BYDニュースリリースより)
「SEAL」の内装(写真:BYDニュースリリースより)

BYDが日本市場で商品販売を始めると、最初にイノベーターやアーリーアダプターと呼ばれる新しいもの好きのユーザーが購入を試みます。おそらく彼らはBYD車の性能に満足するでしょう。しかしビジネスとしての問題はその先、一般ユーザーがメイド・イン・チャイナのEVを買うためのボトルネックです。

ここはマーケティング用語で「キャズム(断層)」と呼ばれる部分なのですが、アメリカの消費者が洗濯機に「壊れたときのサービスレベルの高さ」を求めたように、日本の消費者もBYDが考える4つのボトルネック以外の別の4つの項目が気になるはずです。

それは「もし故障した場合のサービスレベル」「中古市場での下取り価格」「事故を起こさないための安全性能」「もし事故が起きたときの安全性能」の4つ、これをBYDにとっての5番目から8番目の障壁としましょう。

突然動かなくなったらどうする?

5番目の障壁ですが、EVは電気製品ですから起きうる故障としてはガソリン車とは違った故障が想定されます。ガソリン車の場合、「何か調子が悪い」といってもいきなりエンジンが止まって車が動かなくなるということは、ほとんどなくなっています。そのためディーラーまで走っていってそこで見てもらうということができるのですが、EVの場合、突然エラーが出て動かなくなったらどうなるという問題が消費者の立場では懸念されます。「修理は?」「代車は?」「どれくらいかかるの?」といった点での安心感が必要になります。

次の懸念として5年乗った後、中古市場で日本車同様に高く引き取ってもらえるかどうかが6番目の障壁として問題になります。おそらく新参者としてのBYDの場合、買取価格保証を打ち出さないと一般のユーザーが購入には動かないでしょう。

7番目の事故を起こさないための安全性能として中国で販売されているBYD車も自動ブレーキや360度監視装置のようなハイテク機器が装備されています。カタログスペック上はそうだとして、その信頼性が一般ユーザーの関心です。そして安全装備があったとしても後ろからトラックに追突された場合、車体がどれだけの剛性を持っているのか、エアバッグはどのように作動するのかという8番目の要素も心配です。

もちろんかなり広範囲の商品においてメイド・イン・チャイナの製品性能自体は日本メーカーに大きく見劣りしないレベルに来ていることは事実です。BYDの場合はもともと電池メーカー出身で航続性能は最初から高いものがあります。電気製品としての基本性能は提携するファーウェイと、安全サポート技術は百度との提携でカバーされることになります。

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