「ストレンジャー・シングス」が救うNetflixの危機 「オタク」「80年代」が13億時間視聴を生み出した

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オタク少年ら負け犬キャラクターこそ、今の時代に求められる主役だ(写真:Netflix)

まず、メインの登場人物が“負け犬”という烙印を押されたキャラクター一色でそろえられていることが重要なポイントの1つにあります。中心メンバーであるマイク、ダスティン、ルーカス、ウィルはオタク少年として描かれ、先のライダー演じるジョイスはシングルマザー、警察署長のホッパーは訳アリバツイチといったふうに大人まで不器用な人物像です。超能力を持つイレブンに至っても心に闇を抱える設定を強調しています。舞台もインディアナ州ホーキンスという架空の田舎町で華やかさとは無縁です。

そんな一見して社会に取り残された負け犬たちこそ、今の時代に求められる主役です。全能ヒーローものがもはや時代遅れとなるなか、シーズンごとに負け犬たちの勢力を拡大させるストーリーを作り上げています。彼ら彼女らが悩みながらも勇敢に立ち向かい、イレブンが鼻血をたらしながらモンスターに向かう姿は思わず応援したくなるもの。狙いどおり共感を生み出していったのです。

'80年代アイテムが話題性の仕掛け

また'80年代を舞台に象徴的なカルチャーをカジュアルに取り入れていることも功を奏しています。これについてもシーズンを追うごとにウォークマンやアメカジファッション、そして当時の音楽など'80年代アイテムの数々が話題性の仕掛けとなっています。最新作のシーズン4ではケイト・ブッシュの楽曲「神秘の丘」が劇中に巧みに落とし込まれ、37年ぶりにアメリカ・Billboard Hot 100のトップ10にランクインする記録を作りました。

これら'80年代アイテムに身を包んだお気に入りのキャラクターたちがツイッターやTikTokで自由に焼き直されるシーンの設計も実に戦略的です。メディアを横断して総合的にプロモーションしていくトランスメディア展開こそ「ストレンジャー・シングス」の大きな成功理由です。ゲーム化まで実現させています。

当初は古風さのある作品性とクリエイティビティー1本で勝負していましたが、今では制作費がかけられ、贅沢になり、経済でも勝負するエンターテインメント作品として「ストレンジャー・シングス」がNetflixを救っているのです。

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