三井:新刊『これから日本で起こること』では、地方経済が苦しんでいる現状について多くのページを割かれていらっしゃいますが、中原さんは地方経済の実態を、どのようにご覧になりますか。
アメリカの後追いで、日本は本当に格差社会に
中原:私は仕事で地方に足を運ぶ機会も多く、地方に行くたびにその地域の景況感をいろいろな立場の方々にお伺いしているのですが、すでに2013年後半には、大企業に勤める人々は「景気は少しずつ良くなっている」と喜んでいるのに対して、その他の多くの人々は「ぜんぜん景気は良くなっていない」とあきらめてしまっていました。
とりわけ、地方では弱い立場にある中小企業や零細企業の経営は、いっこうに良くなる兆しが見えず、円安による原材料費の高騰や電気料金の値上げなど、むしろ物価高からのコスト増によって苦しくなるばかりです。
大半の中小企業の声は、「コストダウン要請が厳しい」「先行きが見えない」など、いまだに悲観的な意見が多く聞かれている始末です。このような意見は、地方に行けば行くほど、多く聞こえて来るようになっています。
厚生労働省の毎月勤労統計によると、日本全国の実質賃金は2014年(1月~11月)の平均で2.7%減となっていますが、都道府県別の毎月勤労統計によると、大都市圏と地方の労働者の間では実質賃金に大きな開きが生じてきています。
地方のなかでは県単位で見ると、実質賃金が4%あるいは5%下がっている自治体が、少なからずあるのです。
その一方で、富裕層と呼ばれる人々は「もっとアベノミクスを続けてくれ」と言っています。東京都心の赤坂や六本木界隈で聞いてもみなさん「景気はいい」と言っていますし、ある大企業の役員会でお話した時は、みなさん「僕のまわりはみんな景気がいい」と言っていました。
最近の日本の状況を見ていて思うのは、日本が2000年代前半のアメリカに似通った状況になってきていると感じられることです。このままでは日本が本格的な格差社会になり、アメリカのように治安が悪く、国民同士が信じ合えない、ギスギスした社会になってしまわないかと、大いに懸念しているところです。
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