三井:最後の質問となりますが、日本経済が回復するためには、中原さん自身はどのような経済政策を行えばよいとお考えでしょうか?
中原:私がこれまで日本が取るべき経済政策として主張してきたのは、けっして過剰な金融緩和に頼ることなく、地道に時間をかけて成長産業の育成に力を注いでいくということです。いくつもの成長産業を育成していけば、そのうちに外部環境が自然と日本に有利なように変わってきて、日本経済は良くなっていくだろうと考えていたからです。
詳しくは過去の著書でも触れていることですが、アメリカ経済が想定通りドル高を伴って2014年~2015年に本格的な復活をすれば、日本経済も2015年以降にその恩恵を受けることができるようになると、私は考えていました。というのも、従来の貿易統計ではなく、付加価値で計算し直した貿易統計を見ると、日本が大幅な黒字を保っているのはアメリカに対してだけであるからです。
アベノミクスで、本格的な景気回復は3年遅れに
さらには、早ければ2016年にも原油価格が50ドル割れまで下落し、家計の消費余力が拡大すると見込んでいたので、成長戦略が実を結ぶ前であっても、日本経済は明るさを取り戻すだろうと考えていたわけです。
ところが、原油価格が想定以上に早く半値以下になることによって、世界的にガソリン価格が大きく下がっているにもかかわらず、日本ではその効果の大半が円安によって相殺されてしまっているので、他の国々に比べればガソリン価格が安倍政権発足時とそれほど変わってはいないのです。
結局のところ、安倍政権は成長戦略だけに専念して、アメリカの景気回復と原油価格の下落に伴うデフレを待っていれば、それだけで日本の景気にはだいぶ明るい兆しが見えてきていたはずなのです。国民の実質賃金はそれだけで上がっていくわけですから。
今となっては、なぜアベノミクスのような筋の悪い政策を実行してしまったのか、残念に思えてなりません。現状を冷静に見てみると、日本の本格的な景気回復は、あと3年は遅れてしまうだろうと見ています。
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