セイコーと出荷量で互角、「東京・下町企業」の正体 元浅草の格安時計メーカーが海外進出に挑む

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サン・フレイムは「チープな(安い)時計」のニーズを満たすため、1984年に誕生したメーカーだ。セイコーが水晶と電気で動くクォーツ時計の量産に世界で初めて成功したのは1969年。以後、時計の出荷数は爆発的に増大していく。しかし当時、時計はまだ特別な存在で、進学や就職のお祝いとして贈られるものを大切に使う、といった高額品が中心だった。

一方で、「もっと安い時計を」という満たされない需要があった。それに応えるため、格安時計の製造・販売に乗り出したのがサン・フレイムだった。大手メーカーが外販しているムーブメント(駆動部品)を使い、安く組み立てる。カップルで身に付けられるペアウオッチを1万円ほどで販売したところ、カタログ通販などで爆発的に売れた。

インバウンド蒸発で海外に挑戦

低価格で使いやすく、服のように着替えられる腕時計という意味の「ファッションウォッチ」という言葉を他社に先駆けて使い始めたのもサン・フレイムだという。今も毎月10種類以上の新商品を投入し、移り変わりの早い流行に対応している。そのため生産量も多いが、型数も多い。

時計製造の一番のハードルは不良品の多さだ。組み立て時に混入した塵でムーブメントが壊れたり、文字盤に傷が入ったりする。協力先の香港や中国の工場と一緒になって製造環境を整え、不良品を減らす努力を徹底。電池切れや時刻がずれるといったトラブルが生じたときのアフターケアを行う自社のサービスセンターも設けた。

腕時計の針付けが行われているのは東京・元浅草にあるサン・フレイムの工房(記者撮影)

2015年には、本社を構える東京・元浅草に時計を組み立てる工房を設置した。生産能力は月3万本ほど。インバウンド(訪日外国人観光客)需要を見込んでの投資だ。Made in Japanの刻印のあるサン・フレイムの腕時計はすべて、この元浅草の工房で作られている。

ただ、コロナ禍とともにインバウンド需要は蒸発した。「なくなったものを取り戻すよりは、あたらしいものの開拓に力を入れる」と保野社長。オンライン参加した商談会では、東南アジアや南米で「安くておしゃれで高品質な腕時計」への引き合いが強いことを実感した。海外営業部を新たに設置し、サン・フレイムは海外への進出にも挑もうとしている。

吉野 月華 東洋経済 記者

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よしの・つきか / Tsukika Yoshino

精密業界を担当。大学では地理学を専攻し、微地形について研究。大学院ではミャンマーに留学し、土地収用について研究。広島出身のさそり座。夕陽と星空が好き。

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