ブックオフに通う中で次第に音楽を作るようになっていったテレマビさんですが、例えば、ブックオフで出会ったCDをサンプリング(編注:ある録音された楽曲や音源の一部を切り出し、それを新たな楽曲の一部として用いる手法のこと)したりするんですか?
テレマビ:いや、サンプリングは表立ってはやらないですね。著作権が怖いんですよね。
谷頭:「DJってそういうものじゃないの!?」というツッコミが上の世代から聞こえてきそうです。
テレマビ:でも、今はSNSで、著作権侵害とかですぐに叩かれちゃう時代ですからね。
谷頭:それが今の10代の感覚なのかも。そうすると、ブックオフでの経験ってどのように創作に影響してるんでしょうか。
テレマビ:例えば、ブックオフで出会った漫画を買って、読んで「うわー」ってフィーリング感を持った後に、そのまま曲を作ったりするんですよ。
谷頭:なるほど。ブックオフで偶然出会ったものから得たフィーリング感のまま、曲を作るっていうところがあるわけですね。
テレマビ:どこか別のところで言ったかもですが、冬目景の『羊のうた』という漫画を読んで、食らってしまって、『lament of the lamb』という曲を作ったことがあります。
谷頭:ラメント・オブ・ザ・ラム……まさに『羊のうた』ですね。「食らってしまった」とはどういうことでしょうか?
テレマビ:凄すぎるものを見た時に、「うわーっ!」ってなることってありますよね。例えば、フェノールフタレイン溶液ってあるじゃないですか。アルカリにだけ反応するのは教科書で知ってたけど、実際に目にした時、僕はその変化の仕方に「わー、ほんとになるんだ!」「なんか嘘みたいだな……」って思ったんです。そういう驚きに近い感じを、ブックオフで出会った作品から貰うことが多いんですよ。
谷頭:普通であれば、ブックオフで出会った音楽作品をそのままサンプリングしそうなものですが、テレマビさんはブックオフという空間で受けたフィーリングを曲にしている。いわば、「感覚のサンプリング」ってことなのかもしれませんね。
テレマビ:まさに、フィーリングだったり、考え方だったりとかですね。
110円コーナーは「アルゴリズムの外側」だ
谷頭:そういうフィーリングってある意味、「今まで出会ったことのない商品と出会うことから始まる」と思うんですよ。先程も冬目景作品の名前が挙がってましたが、ほかにも「ブックオフじゃないと出会わなかった」ものってあったりします?
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