「時給はどの工場でも9元か10元(約183~203円)。去年の夏は1カ月で4000元(約8万1284円)以上稼げたのに、今年は2000元(約4万642円)余りがせいぜいだ」。夏場の期間工として働くため江西省から広東省東莞市にやってきた陳諾さん(仮名)は、そう言って肩を落とす。
中国有数の製造業の集積地である華南の珠江デルタ地区では、臨時雇いの期間工の求人が例年夏場にピークを迎える。7月になると(夏休みに入った)何万人もの学生たちが内陸部の江西省、湖南省、貴州省、広西チワン族自治区などからアルバイト先を探しにやってくるからだ。多くの工場にとって、彼らは繁忙期の生産を支える貴重な労働力である。
ところが、今夏の様相は大きく変わった。「去年の夏は学生アルバイトの応募があれば全員雇い入れ、時給は14元(約284円)だった。でも今年は工場の受注が振るわず、期間工は1人も募集していない」。東莞市のある企業の社員は、財新記者にそう打ち明けた。
「求人通り」の別名を持つ東莞市厚街鎮の東明路は、昨夏までは1キロメートル足らずの道の両側に臨時の求人紹介所が軒を連ね、大声で学生たちを呼び込んでいた。しかし今夏はすっかり賑わいが消え、人材募集代理業者の事務所はシャッターを下ろし、飲食店も閑古鳥が鳴いていた。
一般作業員の待遇にも影響
東莞市だけではない。隣の深圳市の工業団地でも期間工の求人が大きく減り、時給も10元(約203円)前後に下がっている。
その直接的な理由は、珠江デルタの製造業の受注がおしなべて減少していることだ。背景には新型コロナウイルス流行の影響による消費の低迷、物流の混乱、原材料価格の高騰など複数の要因がある。なかでも受注の落ち込みが大きいのが、輸出をメインに中低価格帯のアパレル、日用雑貨、電子機器などの製造を手がける(技術水準がそれほど高くない)企業群だ。
現地の複数の人材募集代理業者は、今夏の期間工の求人数は例年より3~4割も少ないと口をそろえる。
「学生アルバイトの時給が下がったせいで、農村出身の出稼ぎ労働者の求人や待遇にも影響が出ている」。東莞で働き口を探していた2人の中年労働者は、財新記者にそう愚痴をこぼした。彼らによれば、工場の(期間工ではない)一般作業員の求人でも時給が11~12元(約224~244円)に下がっているという。
(財新記者:黄蕙昭)
※原文の配信は7月11日
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