IIJ、接待問題で辞めた総務官僚が副社長になる訳 「元総務省ナンバー2」の谷脇氏本人を直撃した

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――国内外の政策動向に通じた谷脇さんだからこそ、副社長に起用された面もあるのでは。

今話したセキュリティ事業に限らず、グローバルなビジネスもIIJには重要だ。目下、IIJの海外売上高比率は10%未満にとどまっている。つまり、今後の伸びしろが大きいということだ。

これまでアメリカとフランスに足掛け5年は海外駐在していたほか、NISCに出向していた頃はサイバー分野に関する日本・ASEANなど海外政策協議を手がけていたこともあった。こうした経験をうまく生かせれば、グローバル展開でIIJの新たな利益創出につなげられる可能性もある。

総務省時代にやり残したことはない

――総務省在職時はMVNOの参入促進、携帯端末値引きの上限設定など、モバイル市場の競争活性化に取り組んできました。

今まで行政として取り組んできたのは、モバイル市場を一般ユーザーから見てわかりやすいものにしたいということ。(携帯端末の値引き上限額設定などで)端末と通信価格の分離を進めた結果、業界内では(端末販売が鈍ったことで)「谷脇不況」という言葉も生まれたほどだった(苦笑)。

一方、競争の促進は料金の低廉化とサービスの多様化につながると考えて、MVNOの新規参入を進めてきた。この信念は今も変わらない。 当時はまさかMVNOの企業に移る日が来るとは思わなかったが……。

――MVNOで首位の「IIJmio」は今後、どう育てていきますか。

IIJmioは、非常にシンプルなプランで料金が安い。こうした点が多くの顧客から支持をいただいている。大手キャリアから仕入れる通信回線の仕入れ原価にあたる「接続料」は今後、年を追うごとに下がっていく見通しで、当社のようなMVNOには追い風だ。

たにわき・やすひこ/1960年生まれ。1984年郵政省(現総務省)入省。総合通信基盤局長などを経て、2019年総務審議官(郵政・通信)。接待問題を受け、2021年3月退官。2022年6月からIIJ副社長(撮影:風間仁一郎)

近年、値下げが続いているIIJmioの料金はこれからも頑張って下げていくが、いろいろな面から顧客利便性を高めていくことも忘れないようにしたい。MVNOの競争の軸は料金だけではない。消費者にとってはもちろん安いに越したことはないが、使い勝手やサービスの多様性など、料金以外の魅力も重要だと思っている。

――総務省時代は、「事務次官の就任が目前」とも言われてきました。やり残したことはないですか。

ない。やりたかったことはその時々であったが、昨春に退官したことで何か特別にやり残したことはないという気持ちでいる。IIJでは自らの経験を生かして、貢献していきたい。

高野 馨太 東洋経済 記者

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たかの けいた / Keita Takano

東京都羽村市生まれ。早稲田大学法学部卒。在学中に中国・上海の復旦大学に留学。日本経済新聞社を経て2021年に東洋経済新報社入社。担当業界は通信、ITなど。中国、農業、食品分野に関心。趣味は魚釣りと飲み歩き。

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