松本明子さんも経験「実家は結局、賃貸が難しい訳」 専門家が教える実家の売却・賃貸経営のリアル

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松本:でも、ただマンションを持っているだけでも、固定資産税のほかに管理費と修繕積立金が毎月かかってきますよね。

上田:そうなんです。だから、早めに売却される方が多いのです。

松本:ただ持っているだけという人は少ないわけですね。

上田:そうですね。維持費が負担になるので結局売られる方が多いですね。

実家を賃貸物件にして成功する3つの条件

松本:実は香川県の空き家バンクに登録してしばらくした頃、借りたいという人が現れたんです。でも「月2万円なら」というのでお断りしました。

登録時の希望は月10万円。最低でも月5、6万円と考えていたので。いまから思えば、高望みでした。どうしても賃貸を成功させたい場合は、どんなことが条件になりますか。

上田:地方の不動産需要がかなり小さい地域の場合は、賃貸物件がほとんどありませんから、逆に手入れがされた状態のいい物件であれば、空き家の活用法として賃貸も選択肢になる可能性はあります。

ただし田舎で家賃が月2万円しか払ってもらえないとしたら年24万円ですよね。初期投資に200万円かけたら、回収に8年以上かかります。

さらに雨漏りなどで修繕費が300万円かかれば、その回収に12年以上かかってしまいます。家賃が低い地方の場合は、家賃で初期投資や修繕費をまかなうのが難しい場合が多いのです。

松本:賃貸が成立するラインというか、具体的な目安があれば教えてください。

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上田:当センターの場合、①人口が10万人以上、②家賃を10万円以上払ってもらえる、③リフォーム代(初期投資)を10年以内で回収できる、というのが1つの目安です。

実際は家賃5万円程度が目安になるかと思います。それを下回ってしまうと修繕等の負担が重すぎるケースが増加します。

たとえば首都圏の埼玉県を例にするなら、所沢は人口30万人の都市ですから問題ありません。その先の入間や狭山も人口15万人前後なので大丈夫です。

でもそれより奥に入ると人口が10万人を切ってくるので家賃10万円は難しく、初期投資や修繕コストを考えると経営的に合わなくなってきます。

松本:高松は人口40万人ですけど、私の実家のように郊外で家賃が「2万円なら」と言われるような場所では厳しいということですね。

上田:そういうことです。

松本:私の場合はそこまで深く考えたわけではありませんでしたけど、希望するような値段で借りてくれる人はいそうもないな、と見切りをつけて売ることにしました。

上田:よい判断だったと思います。

松本 明子 タレント

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まつもと あきこ / Akiko Matsumoto

1966年生まれ、香川県高松市出身。82年に日本テレビ系『スター誕生!』チャンピオン大会合格を機に歌手デビュー。その後、日本テレビ系バラエティ『DAISUKI!』や『進め!電波少年』などで人気を博し、元祖バラドルとしての地位を確立する。独り暮らしを始めた19歳の頃から、本格的な節約生活をスタート。「ストッキングをインナーとして再利用」「楽屋のお弁当は必ず持って帰る」などの徹底した節約ぶりがテレビなどのメディアでたびたび取り上げられ「芸能界の節約女王」と呼ばれる。現在も、日々の暮らしの中で創意工夫を重ねながら節約を楽しむ「ケチ道」にまい進し続けている。

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上田 真一 NPO法人空家・空地管理センター代表理事

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うえだ・しんいち / Shinichi Ueda

1984年生まれ。米オハイオ州立大学卒業後、リクルートを経て2013年空家・空地管理センター設立。北斗アセットマネジメント代表取締役兼務。著書に『あなたの空き家問題』。

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