松本明子さんも経験「実家は結局、賃貸が難しい訳」 専門家が教える実家の売却・賃貸経営のリアル
上田:思い出のある実家を手放したくない、というのが賃貸を検討する方に圧倒的に多い理由です。
確かに不動産会社に仲介をお願いして借り主が決まれば、家賃収入は得られます。ただし賃貸経営は事業ですから、当然手間もかかればリスクもともないます。空き家は通常あちこち傷んでいるので、そのままでは貸せません。
事業を始める前には、必要に応じて、外壁の塗装、水回りの設備の交換、屋根を直すなどのリフォームをすることになります。その費用は数百万円単位になるのが普通です。
松本:リフォームはお金がかかるんですよね。
上田:そうなんです。仮に家賃収入が月10万円で年120万円の場合、初期投資に300万円かけるとすればその回収に2年半かかります。利益が出るのはそれからです。
もとよりそれだけ投資をしても入居者が継続的につく保証はないですし、事業を始めたあとも築年数の古い物件だと給湯器が壊れたり、雨漏りするようになったり、と予想外のトラブルが起きることが少なくありません。
そうなると貸主責任(民法606条)があるので直さないといけない。初期投資のほかに想定外の出費がかさめば、家賃収入ではなかなかペイできない恐れがあります。
ですから、最初は空き家となった実家を手放したくないけれど、人に貸したいと思っても投資負担の重さや賃貸のリスクがあることにお気づきになって、賃貸ではなく売却、という判断をされる方が圧倒的に多いのです。
松本:私も最初はそう思っていました。だから香川県の空き家バンクにも賃貸と売却の方で登録したんです。できれば実家を手放したくない気持ちがあったので。
上田:やはり実家ですから、みなさん、できるものなら売りたくはないんです。だから賃貸を考える。ただし、賃貸経営のことはよくご存じないので、つい手間とリスクなしに家賃収入を得たいと、軽く簡単に考えてしまう。
ですから、私どもにご相談に来られる方には、必ず「賃貸経営をする覚悟」についてお話しします。
お金もそうですが、家賃滞納や夜逃げといった入居者とのトラブルもあります。リフォームをするにしても建築会社やリフォーム内容の決定、資金繰りといった事業に関する決定をしないといけません。
こうした事業を行うということに対する手間やリスクをみなさん受け入れられないため、売却に進んでいきます。
マンションも早めに売却する人が多い
松本:親が亡くなったりして分譲マンションの所有者になるケースもあると思うんですけど、マンションでも売る方が多いんですか。
上田:早めに売却される方が多いです。もちろんなかには、好立地で比較的新しいというので、売らずに賃貸に出す方もいます。分譲マンションの場合は、プロが管理をしてくれるので、戸建てほど人に貸すリスクが高くないんです。
ただし貸せるほどモノや立地がいい物件は少ないので、賃貸経営を選ぶ方は多くはありません。かといって、いま住んでいる自分の家もあるので親のマンションを使うこともない。