企業の「ネット炎上」がなぜか止まらない根本原因 なんでも「炎上」時代に企業はどう対策すれば?

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信じがたいことに、これは2016年の春、神奈川県内で実際に起きた出来事です。この公園、花見の場所取り自体は禁止されていませんでしたが、場所を確保した後に立ち去るのはNG、必ず誰かが残ってねというルールでした。にもかかわらず巨大なブルーシートを敷いた誰かさんは、注意書きを残し、さっさと仕事に戻ってしまったのです。

しかも注意書きに記載されていた会社名は、プラント設備の製造や建設まで手掛ける日本有数の大企業でしたからね、それはもう見事なくらい大炎上しました。

ネット上でのバッシング、本社へのクレーム電話はもちろん、一連の騒動がニュース・新聞でも報じられ、「●●株式会社の本社敷地に桜の木があるから、そこにブルーシートを敷いて、お花見しようぜ」と参加者を募る人まで現れました。もちろん株価も下落し、気の毒な●●株式会社の広報さんは平謝り。ブルーシートは早々に撤去されました。

  • 公共の場所での迷惑行為
  • 世間を逆なでする物言い
  • 著名な大企業の社員

さすがにこれだけそろえば、世間からのバッシングも当然だったのですが、私にとってこの出来事は別の意味で相当な衝撃でした。なにしろこの一件、どこからどう見てもネット炎上なのに、騒動の原因を作った当事者は、ネットに一切触っていませんでしたから。

「ネットを使わなくても、ネット炎上は起こせるんだ……」と、妙にすがすがしい気持ちになり、自分の中でネット炎上の定義を、より幅広いものに改めたことを鮮明に覚えています。

ネット炎上に、ネットはいらない

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ネットでの発言、投稿に限らず、世間の非難を集める振る舞いをすれば、ネットでバッシングされ炎上する。これだけ多くの人がスマホを持ち歩き、SNSを利用している現代は、いわばテレビ局の生中継スタッフが、街の表通りから路地裏に至るまでつねに待機しているようなもの。

公の場で迷惑な振る舞い、悪目立ちする言動をすれば、瞬く間に世界中に拡散しバッシングされる。ネット炎上に、ネットはいらないのです。企業のリスク担当者にとっては、非常に難儀な時代だと言えます。なにしろ社員の私生活や勤務外での振る舞いにまで、リスク管理を求められるようになったのですから。

小木曽 健 国際大学GLOCOM客員研究員

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おぎそ けん / Ken Ogiso

1973年生まれ、埼玉県出身。複数のITベンチャーを経て現職。書籍や講演、メディア出演などを通じて「ネットで絶対に失敗しない方法」やネットリテラシーに関する情報発信を幅広くおこなっている。これまでに企業、学校、官公庁などで2000回以上、のべ40万人に講演。著書に『11歳からの正しく怖がるインターネット』(晶文社)、『ネットで勝つ情報リテラシー』『大人を黙らせるインターネットの歩き方』(筑摩書房)、監修に『13歳からの「ネットのルール」』(メイツ出版)他多数。

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