旅先で「1万円貸して」から結婚に至った2人の顛末 トラブルから2年後、思わぬ展開に…

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達夫さんはマイペースでゆっくりした口調で当時を振り返る。自作の紙芝居まで用意して思い出話をどんどん展開する留美さんとは対照的だ。達夫さんは彼女を目的地まで連れていき、船代の1万円も貸す羽目になったらしい。

「ATMがある食品スーパーが信じられないぐらい早い時間に閉まったせいです。彼は本当に嫌そうな顔でお金を貸してくれました(笑)。私だって普段は旅先で出会った人とそんなに深く関わりません。絶対に返すから、と言って住所と連絡先を交換しました」

2年後、再会したら……

成り行き任せで生きているような2人が再び連絡を取り合うのは2年後。留美さんが旅仲間に北海道の利尻島近くで住んでいる人を紹介してほしい、と頼まれたのだ。お互いに名前すらほぼ忘れかけていた縁がつながった瞬間だ。

達夫さんは住民の全員が知り合いのような町で生まれ育ち、家業の酪農に従事していた。その後、家族の体調悪化で酪農は廃業。達夫さんはトラック運転手として生計を立てていたため、全国どこでも働ける身に。「知り合いのいないところで住んでみたい」という気持ちが高まり、留美さんが暮らす東海地方の町に滞在するようになった。

「うちで泊まることが多かったですが、別に付き合っていたわけではありません。ほかの人も含めて一緒に住んでいた時期もあります。でも、『この人は私のことが好きなんだろうな』とは思っていました。それぐらいはわかりますよ」

常識もあるけれど自由を何より愛する留美さん。達夫さんとも束縛し合うことのない関係を続けていたが、「旭山動物園を見たい」と思い立って2人で北海道を旅することにした。旭川市からひたすら北上すれば達夫さんの実家にたどり着く。

「家族が呼んでいるから、と言うので軽い気持ちでお邪魔することにしました。そうしたら大歓迎され、おじいちゃんやお母さんから祝儀袋を渡されたんです。『そういう関係じゃないから』と突き返すかと思っていたら、彼は平気で受け取っていました。びっくりです。彼を別室に連れ出して、『アンタね。どういうつもり!? 外堀から埋めるなんて作戦は私には通用しないよ。大阪城の豊臣家じゃないんだからね!』と抗議しました」

北海道育ちの達夫さんには大阪冬の陣にひっかけた抗議は理解できなかったようだ。祝福されてお金もたくさんもらってうれしそうにしている。本音を言えば留美さんも嫌ではなかった。男性から家族を紹介されたのは初めてのことだし、みんなに認められた関係も悪くないと感じた。

「翌日は親戚回りをしました。お芝居をしているみたいで楽しかったです。関係ない人からも『新婚旅行ですか?』と言われたりして。なんだかんだ言って、このときから私たちは結婚していたのだと思います。彼の家族はうちからは遠すぎてうるさいことは言われないし、責任感も一切ない結婚ですけど!」

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