吉本芸人も参加!大阪発「スタートアップ」の挑戦 芸人が働きたい企業を選びマッチングさせる

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それに対して中野氏は「芸人さんの感性や話術は我々とまったくレベルが違う。プロのすごみがあります。情報発信の仕方や消費者へ向けたプレゼン手法だけでなく、仕事のスキル的な面でも学び、その後に活かせることはたくさんあると思います」と先を見据える。

芸人たちからは「ビジネスの現場の話を聞くことはいい経験になる。ネタ作りに活かしたい」「新しい漫才が生まれるかもしれない」など、3カ月のコラボ経験をその後の芸人活動へ還元することへの意欲も語られた。単発の仕事で終わない双方にとってのメリットが、お互いに意識として共有されていることがわかる。

政府もスタートアップを後押し

スタートアップ振興は、岸田文雄首相の看板政策「新しい資本主義」の柱のひとつとなり、政府によるこの先の「スタートアップ担当相」設置の検討も伝えられている。革新性を生み出すスタートアップは、経済成長の原動力になるほか、社会課題の解決にもつながるとして政府の期待は大きい。この先、税制や規制の緩和などを盛り込んだ振興法策定も進められる見込みだ。

そんな社会的流れに重なる本プロジェクトだが、吉本興業が芸能プロダクションの枠を超えて自社リソースを社会貢献活動に活かそうとする積極的な姿勢は、これまで以上にその領域も幅も広くなっていることを感じる。

今回のイベントで生まれた両者のコラボによって、企業だけでも芸人だけでも不可能だった化学反応が生まれ、新たなビジネスの芽が大きく育っていくことが期待される。ひいてはそれが社会的価値の創造につながっていくことだろう。

吉本興業担当者は「実際にスタートアップで働くという目線があるから、芸人たちの姿勢が違いました。このプロジェクトが新しい何かを生み出す可能性は十分あります」と期待を寄せる。3カ月間の取り組みと10月の成果発表、さらにその先の展開に注目したい。

武井 保之 ライター

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たけい・やすゆき / Takei Yasuyuki

日本およびハリウッドの映画シーン、動画配信サービスの動向など映像メディアとコンテンツのトレンドを主に執筆。エンタテインメントビジネスのほか、映画、テレビドラマ、バラエティ、お笑い、音楽などに関するスタッフ、演者への取材・執筆も行う。韓国ドラマ・映画・K-POPなど韓国コンテンツにも注目している。音楽ビジネス週刊誌、芸能ニュースWEBメディア、米映画専門紙日本版WEBメディア、通信ネットワーク系専門誌などの編集者を経て、フリーランスとして活動中。

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