次に乗り換えたAIR(AWD)は、少し感じ方が違った。エンジンは1.5リッターVTECターボで、加速の具体が“ほどよい”。いわゆる“リニア感”が吟味されていることが、身体全体でしっかりわかった。
アクセルワークに対してクルマが急に動くのではなく、ターボによる走りの伸び感も適度で自然に走らせられるイメージだ。
e:HEVとは違う、走りの楽しさと安心感がある。ハンドリングに、AWDのクセはあまり感じない。乗り心地については、先に乗ったSPADA PREMIUM LINEと比べると、やや路面の凹凸を拾う印象があった。
これは「AWDによる重さや、16インチのタイヤサイズ(SPADA PREMIUM LINEは17インチ)など足回りのセッティングとの兼ね合いでこう感じるのか」と蟻坂氏に聞いたところ、「後輪のサスペンションの基本設計上、サスペンションのストローク(上下動の幅)がFFより若干少ないことが影響している」という見解を示した。
人の感性に訴えるには「人の感性による創り込み」を
蟻坂氏へのインタビュー後、エンジン、そしてインテリアやパッケージングの開発担当者らとオンラインで意見交換した。彼らから出てきた言葉は、「王道」「原点回帰」「飛び道具はない」といった、ホンダとしてミニバンのあり方を真正面から捉えたものばかりだった。
そのうえで「具体的に、いわゆるKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)といった数値指標を社内でどのように設定したのか」と聞いてみた。すると、もっとも重要な車内空間について「デジタルツールでは測れない、実際に乗り込んだ際の“人の感覚”を体感しながら決めていった」というアナログな答えが返ってきた。
具体的には、1分の1(実車サイズ)のモデルを何度も作り直して、「しっくりくるのか、落ち着くのか、という方向性で体感と体験を積み上げていった」という。
ハイブリッドシステムやガソリンエンジンについても「数値目標としてのチェック項目はかなりの数にのぼるが、(重要視したのは人の感覚に対する)感応的な領域であり、アクセル開度に対するクルマの動きの“一致感”だ」と、作り手の感覚がチューニングの決め手になったと指摘する。
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