同時多発熱波が頻発、世界で特に「危ない地域」 温暖化のインパクトは気流変化でさらに過酷に

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「熱波を引き起こすには熱が必要だが、その熱を蓄積させる大気循環のパターンも必要になる」。ノースウェスタン大学の気象学者、ダニエル・ホートンは地球温暖化が進行したことで「人類は間違いなく、さらなる暑さに見舞われることになる」と話す。ホートンによると、気候変動は地球を循環する気流の変化によって、熱が世界に分散される仕組みにも影響を及ぼしている可能性があるという。

各地で同時発生する極端な熱波は、単に異常気象として片付けられる問題ではない。個々の熱波は、熱中症による死亡や山火事、不作などにつながることもある。熱波が各地で同時発生すれば、世界の食料供給は脅威にさらされかねないが、今年の食料供給はロシアのウクライナ侵攻ですでに危機的な状況にある。

ここ数十年の温暖化により、科学者の間では、何を「熱波」と呼び、何を単なる「暑さのニューノーマル(新常態)」として扱えばよいのかがすでにわからなくなっていると、テキサスA&M大学の気象学者、アンドリュー・デスラーは指摘する。

北半球の中緯度地域はすべて38℃を超える

例えば、華氏100度(摂氏37.8度)を連日上回ることを熱波の定義とするのだとしたら、そうした現象を同時に複数の地域でより頻繁に観測するようになるのは「まったく想定外のことではない」とデスラーは言う。

「時が経つにつれ、地球上のより多くの地域でそのような高気温が観測されるようになり、やがて温暖化が十分に進行した段階では、北半球の中緯度に位置するすべての陸地で華氏100度を超える(気温が観測される)ようになるだろう」

同時多発的な熱波の発生頻度は、気温が移動平均に対し一定の水準を超える頻度を見ても、大幅に上昇している。

そうした分析を行った最近の研究によると、5月から9月の間に北半球で少なくとも1件の大規模な熱波が発生した平均日数は1980年代には約73日だったが、2010年代には152日へと倍増した。だが、2件以上の熱波を記録した日数は、およそ20日から143日へと7倍に増えている。要するに、5月から9月までの期間のほぼ毎日だ。

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