同時多発熱波が頻発、世界で特に「危ない地域」 温暖化のインパクトは気流変化でさらに過酷に

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さらに同研究では、こうした同時多発的な熱波は2010年代に入ると一段と広範囲に影響を及ぼすようになり、最高気温は1980年代と比べて2割近くも上昇したことも明らかとなっている。北半球のどこかで大規模な熱波が少なくとも1件発生していた日には、平均して1日当たり3.6件の熱波が発生していたという発見もあった。

このような「劇的な」増加は意外だったと、研究を手がけたワシントン州立大学の気象学者、ディープティ・シンは語る。

シンらの研究チームは、過去40年間で同時多発的に熱波が発生した場所についても調査を行っている。そこで見られたのは、ある顕著なパターンだ。北アメリカ東部、ヨーロッパ、中央・東アジアの一部地域では、大規模な同時熱波に襲われる頻度が1979年から2019年にかけて高まっていた。「これは温暖化だけで想定される頻度を上回るものだ」とシン。

科学者たちは、長きにわたって気象パターンを形づくってきたジェット気流の蛇行が温暖化時代にどう変化しているのかを突き止めようとしている。ジェット気流の蛇行を変化させている要因の1つは北極の急激な温暖化で、これにより北半球の北側と南側の気温差が狭まっている。ただ、それが極端な気象現象に具体的にどう作用しているかについては、まだ議論が続いている段階だ。

「極端気象」のターボチャージャー

しかしこの気温差こそが、地球上の気圧配置を動かす風を生み出す主な原動力となっている。そのため、気温差が狭まるにつれ、こうした気流の速度は落ちていく可能性があると、コロンビア大学ラモント・ドハティ地球観測所の気象学者、カイ・コーンフーバーは指摘する。つまり、熱波や豪雨といった極端な気象現象がこれまで以上に長く続く可能性が高まるということだ。

「熱波が長引くほど、自然や社会のシステムはさらに窮地に追いやられることになる」とコーンフーバーは言う。

世界がさらに多くの極端な気象現象に見舞われ、それらが同時発生する頻度が高まることは、気候変動によってすでに既定路線となっている。コーンフーバーによれば、「こうした動きを加速させるのが気流の流れ」であり、それにより「極端な気象現象の激しさと発生頻度はさらに増すことになる」。

(執筆:Raymond Zhong記者)
(C)2022 The New York Times

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