「底辺の仕事ランキング」批判集めた6つの問題点 “誰でもできる"の罪深さ、差別で片づけられず

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12の職業に従事する人や家族にとっては、名指しされたうえに「誰にでもできる」「同じことの繰り返し」「年収が低い」「結婚のときに苦労する」などと誹謗中傷に近いレッテルを貼られたわけですから、怒りの感情を抱いて当然。では、運営サイドは、これだけ多くの人々を怒らせてしまうことをどうして想像できなかったのでしょうか。

ビジネスシーンでは数字を追うあまり、リスクに関する想像力に欠けてしまうときがありますが、だからこそストップをかけられる組織体制が必要。メディアで言えば、その機能が乏しい「ワンマン」、または「部員任せ」の編集部は今回のような事態につながりやすいところがあるものです。今のところ『就活の教科書』編集部の内情はわかっていませんが、これらの可能性は高いでしょう。

「選民意識の持ち主」というイメージ

3つ目の問題点は、なぜメリットも書かなかったのか。個人ブログではなくメディアのコンテンツである以上、公平なスタンスで書くことが大前提。今回のような記事では、いくつかフォローの言葉を入れるだけでなく、メリットとデメリットの両方を並べるくらいのバランス感覚が必要でした。

デメリットを書いたとしても、その前後に「感謝の言葉をもらいやすい」「日々の生活を支えるというやりがい」などのメリットも併記したうえでカテゴライズすれば、多少なりとも印象は変わったでしょう。また、デメリットとしての書き方にも、「世の中にとって必要であるにもかかわらず年収が低い」などのバランス感覚が求められます。

今回の記事はそんなバランス感覚に欠けていたため、「この職業がなければ“底辺”と決めつけているあなたたちの生活も成り立たないはずだ」などの批判を受けていました。

このような「自分も世話になっている職業をおとしめてしまう」という行為は、少なからず「自分は選ばれた人間」「彼らとは違う」という選民意識の強い人が犯しがちな失敗。しかも今回は、かなり多くの人々をおとしめてしまったうえに、「就活の教科書」という自信たっぷりのサイト名も影響して、「際立った選民意識の持ち主が運営しているメディア」というイメージを持たれてしまいました。

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