「いじめは犯罪行為」と誤解する親たちの落とし穴 法律の誤解が「解決の可能性」を消す場合も

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このプロジェクトを始めたのには、理由があります。

私自身、小学5年生から6年生にかけて手首を骨折するほどの壮絶ないじめを受けていました。にもかかわらず、中学に進学した際にはいじめの加害者になってしまった。そしてそんな自分自身に衝撃を受けました。いじめ問題の複雑さを体感し、いじめを減らすために何かできることはないかと考えてたどり着いた答えが、「こども六法」を作成するということでした。スタートしたのは大学時代ですが、現在では関連書籍の出版だけでなく、体験型の学びとしての「こども六法すごろく」などを作成しています。

子どもの「いじめ」と大人の「セクハラ・パワハラ」の関係

いじめと法律という話になると、多くの人が暴力などの犯罪行為と結びつけて考えます。しかし、いじめと犯罪は別物です。法律でのいじめの定義は、「被害者がいやだと思ったらいじめ」というものです。被害者の感じ方が重要である点はセクハラやパワハラと同じです。そしてセクハラやパワハラが起きないように会社に監督責任があるのと同じように、学校はいじめが起きないように生徒を指導しなければならない責任を負っています。まずはこの部分を理解しておく必要があります。

いじめと犯罪は別とはいえ、もちろん「いじめであり、犯罪である」ということはあります。相手を殴ってケガをさせるなどがそうです。裏を返せば、こういった暴力に該当しない行為など、態様によっては犯罪にはならないいじめも多くあるわけです。例えば集団で無視をするなどは、犯罪にはなりません。つまり「いじめ=犯罪」と考えていると、無視したり、悪口を言ったり、にらんだりといった、認識からこぼれ落ちるいじめが生じてしまいます。これらが「犯罪じゃないから」という理由で横行したら、被害者は追い詰められてしまいます。

ですから「いじめと犯罪はまったく別物だ」ということを、子ども自身も周りの大人も、ちゃんと理解しなければいけないのです。「みんなで無視しているけど、犯罪じゃないからいじめじゃないよね」といったことが起こらないように、犯罪としては対処できないけれども、苦しんでいる子どもを救うために、法律で決められたいじめの定義があるのです。

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