これは、緩和ケア病棟に入院したことで、どれだけ痛みを取ることができたかを見ているものですが、中程度から強い痛みを感じている患者さんの割合は、非小細胞肺がんで34%→7%、大腸がんで39%→19%、胃がんで38%→16%と、入院時より亡くなる前のほうが減っているという結果が得られています。
それでも痛みを感じている方の割合は0ではないので、絶対大丈夫とは言えないかもしれません。専門家でも和らげることが難しい痛みが、やはりあるのだと思います。
それでは、万が一病気が進行して耐え難い苦しみが生じた場合、どうすればいいか。そのときは「苦痛緩和のための鎮静」という眠る状態を作って、苦しみを感じなくする方法があります。
Aさんが「苦痛緩和のための鎮静」を行うかどうかは本人の希望次第ですが、少なくとも耐え難い体の苦痛から逃れる手段はある、ということはお伝えできます。
真剣に私の説明に聞き入っていたAさんは、「具体的な説明を聞いて少し安心できました。絶対に大丈夫とは言えないけど、体の苦痛を取る医療をきちんと受けられるように、考えていきます」と答えられました。
がんで死ぬのは悪くないのか?
この記事を読んで、100%の安心が得られたわけではないことは重々承知しています。ただ、いたずらに恐ろしいイメージを持ち、情報不足から過大な不安や恐怖を感じている方も多いのです。具体的な情報を知ることができれば、地域のサポート体制などに関して、早めに情報収集するなどの行動をとることができますし、心の準備もできます。
繰り返しになりますが、私がさまざまな患者さんを看取った経験からイメージするがんの療養生活や終末期は、決して陰鬱なものではないということです。
私だけではありません。私が国立がんセンター東病院で研修したときの恩師、海老原敏院長(当時)は、「がんで死ぬのは悪いことではない」と公言され、私の同僚の医師たちの多くが、この意見に賛同していました。
ぽっくり逝く死に方に比べて、がんは死を迎えるまでに時間があります。苦しむ可能性はゼロではありませんが、それを上回るメリットとして、大切な人ときちんとお別れができるなど、死を迎える準備のための時間が与えられ、納得のいくかたちで人生を終えられます。
今後は、精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルな苦痛についてもお話ししていきます。
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