深刻「世界の水不足」を技術で救う日本企業の凄さ 「水の惑星」地球だが、真水は0.01%に過ぎない

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海水淡水化と下水処理を同時に行う

画期的な発想で淡水化のコスト低減を実現したのは日立製作所(6501)だ。

発展途上国では水不足解消のために海水淡水化システムへの期待が高まっているが、多大なコストがかかるため普及していない。同社は海水に下水を混ぜてから処理することでコストダウンに成功した。

淡水化の工程では海水を濾過膜に通過させる時にポンプで圧力をかける。塩分濃度が高ければ高いほど圧力も高くしなくてはならず電力代金がかさむ。そこで、海水に下水を混ぜることで塩分濃度を下げてから濾過して、塩分と不純物を同時に取り除くことにしたのだ。その結果、従来の海水淡水化プラントに比べてコストを30%削減することができた。

この海水淡水化と下水処理を統合したシステムの名称は「RemixWater」。下水を混ぜると聞くと汚いイメージがあるかもしれないが、濾過膜で不純物も取り除くので衛生上の問題はない。

濾過膜では日本が圧勝

熱処理より濾過膜を使用するシステムの方が優勢だが、このシステムの心臓部は言うまでもなく濾過膜であり、日本企業は濾過膜の分野で圧倒的に強い。東レ(3402)、日東電工(6988)、東洋紡(3101)の3社で世界シェアの50%以上を占めている。

東レは1933年に自社製のレーヨンを活用して排水処理用の濾過膜を製造して以来、濾過膜の製造を続けている。

日東電工はシンガポールにおける水ビジネスで先行している。シンガポールは国土が狭くて雨水をためにくいため、排水の再利用や海水淡水化によって自国の水を確保しているほか、隣国マレーシアから真水を輸入している。淡水化プラントなしにシンガポールは存続できないのだ。

日東電工は2000年からシンガポールの排水再利用プロジェクトに参画。水処理膜技術を提供し同国の公益事業庁と共同で排水再利用の事業を進めてきた。水処理プラントの電力量が嵩むことが課題だったが、日東電工が膜面積を拡大して省エネ性と高い透水性を両立させる膜を開発することに成功した。

これまでの実績と技術力から、シンガポールの水ビジネスにおいて日東電工の優位性は揺るがないだろう。

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