しかも、三重県は業界の王者イオン創業の地であり、イオン店舗が密なエリアです。弱者・小者であるスーパーサンシは普通に戦って生き残れるものではありません。それにもかかわらず、ネットスーパーという局地戦においては、スーパーサンシが勝利を収めているのはなぜか。連載第1回となる今回は、そんなスーパーサンシの経営戦略を紹介しつつ、ネットスーパーの勝負の分かれ目や、“弱者・小者”に求められる競争戦略について考察します。
スーパーサンシがおさえた「オセロの四隅」
実は、スーパーサンシが宅配事業に乗り出したのは、もう40年以上前のことです。それはイオン発祥の地で戦うにあたっての差別化戦略でした。当初は電話で注文を受け付けていましたが、インターネットの時代になって以降はネット受注を開始。以降、ネットやスマホが普及していくにつれ利用者が伸びていきました。現在は、13店舗中7店舗がネットスーパーを展開。全体売り上げの2割近くをネットスーパーが稼ぎ、収益率もリアル店舗を上回る水準にあるといいます。
それではなぜ、スーパーサンシは「ネットスーパーの黒字化」を、実現できたのでしょう。スーパーサンシの高倉照和常務は次のように発言しています。「ローカルスーパーがネットスーパーを黒字化し、高収益を上げるためには、オセロゲームでいう"四隅"を絶対に押さえておかないといけないんです」(「DIME」2021年12月号)
ここでいう四隅とは、次のようなものです。
<1>自社配送は黒字化の鍵
ネットスーパーに重くのしかかるのが配送コストです。前述のとおりただでさえ利益率が低いのがスーパーマーケットというビジネス。配送まで外部に委託していたら赤字は避けられません。そこでスーパーサンシは自社配送網を構築し、配送コストを抑えています。
<2>有料会員制で顧客が配送料負担、顧客の利用促進
スーパーサンシのネットスーパーは有料会員制をとっています。月間登録料525円を払うことで何回利用しても宅配料は無料に。これには「配送料を顧客に負担してもらう」という狙いと、「毎月お金を払っているのだから」という意識を働かせることで顧客の利用頻度を高める狙いがあると考えられます。
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