しかし、ここで問題にしたいのは「それで本当に黒字化できるのか?」です。とりわけ、大型物流センターへの投資がペイするほど会員が増えるのかという疑問を指摘しないわけにはいきません。経済産業省の調査によると、全産業のEC化率は8.08%であるのに対し、食品産業のEC化率は3.3%にとどまっています。「新鮮なものを自分で選びたい」「日持ちのしない食品は近所のスーパーで買いたい」等のニーズは根強く、ネットスーパーを普段づかいしている消費者は、いまだ少数派です。
ネットスーパーを黒字化させる3つのポイント
このような状況下で、ネットスーパーの黒字化に成功する企業と失敗する企業の分かれ目はどこにあるのか。私は次の3つを挙げたいと思います。
(1)黒字化への意思、危機感の強さ
先程「食品産業のEC化率が低い」と指摘しましたが、裏を返せばそれだけ「リアル店舗が強い産業」ということです。そのため、大手スーパーは「どうしてもネットスーパーを黒字化させないといけない」というほどの危機感が希薄です。現状では「他社に顧客を奪われるわけにはいかないので」「海外でも成功事例が出てきているし」「赤字でもいいから、とりあえず」ネットスーパーに進出している段階だといえます。
これにたいし、ローカルスーパーであるスーパーサンシには「ネットスーパーを黒字化させないとイオンと戦えない、生き残れない」という危機感がありました。
(2)顧客志向=カスタマー・インティマシー
コンサルタントのマイケル・トレーシーとフレッド・ウィアセーマは著書『ナンバーワン企業の法則』のなかで、企業は業界内で、製品に優れた「製品リーダー企業」か、業務オペレーションに優れた「オペレーショナル・エクセレンス企業」か、顧客との親密な関係を築き顧客満足を追求する「カスタマー・インティマシー企業」か、いずれかのポジションを選ぶ必要があると論じました。これはイコール、他社との差別化戦略のことです。スーパーサンシが選んだのははたしてカスタマー・インティマシー企業でした。
これは、イオン=強者に対する弱者=スーパーサンシの戦略と言い換えることも可能でしょう。戦いにおいて弱者が強者に勝つには、勝者のマネをするのではなく徹底的な差別化が有効です。そして、そのためには戦いにのぞむにあたっての意義、使命感、大義が欠かせません。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら