アメリカEV(電気自動車)大手のテスラは6月17日、中国市場で「モデルY」のロングレンジグレードの値上げを発表した。新価格は39万4900元(約783万7000円)と、旧価格より1万9000元(約37万7000円)引き上げられた。同社は前日の6月16日、本国のアメリカで数車種を値上げしたばかりだった。
中国市場では2022年に入ってから、EVに代表される「新エネルギー車」の値上げが相次いでいる。すでに2回目、3回目の値上げに踏み切ったメーカーも珍しくないが、テスラに至っては今回が5回目だ。その背景について、同社は公式には説明していない。
(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、EV、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)
考えうる最大の理由は、(EVの動力源である)車載電池の原材料コストの急騰だ。中国の非鉄金属情報サイト、上海有色網のデータによれば、電池の主原料の1つである炭酸リチウムの取引価格は2021年初めから年末までの1年間で約3.8倍に上がった。そのため、テスラを含む世界中のEVメーカーと電池メーカーが、生産コストの急上昇に直面している。
購買意欲に冷水を浴びせるリスクも
原材料の高騰が始まった当初は、コストアップの大部分を電池メーカーが吸収していた。しかし、それが可能だった時期はとうに過ぎ、最終製品であるEVの価格に転嫁せざるをえなくなっているのが実態だ。
「車載電池の生産コストの70~80%を原材料が占める。わが社はコストダウンのためにあらゆる手段を講じているが、原材料価格の上昇にとても追いつかない」。中国の車載電池大手、中創新航科技(CALB)の研究開発センターを率いる鄭翔氏は、あるフォーラムでそう発言した。
EVメーカーと電池メーカーの間では、従来の取引方法を見直す動きが広がっている。業界関係者によれば、以前は双方が電池の価格と供給量を四半期毎の交渉で調整するのが一般的だった。しかし最近は「価格連動式」が主流になり、電池の原材料の相場が上がれば、電池の製品価格にすぐに反映される。
価格連動式への切り替えにより、EV業界のサプライチェーンでは上流から下流まで、(コストダウンのしわ寄せが一部に集中することなく)企業がある程度の利益を確保しやすくなった。だが、最終製品であるEVのたび重なる値上げは消費者の購買意欲に冷水を浴びせ、業界全体の安定的な発展を損なうことにもなりかねない。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は6月18日
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