イオン「価格ほぼ凍結」歓迎できない取引先の本音 原材料高でもトップバリュ値上げは3品目のみ

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イオンが値上げに踏み切らなかった理由として、商品力の問題もある。

最大のライバルであるセブン&アイのPB「セブンプレミアム」は、味や品質の高さを武器にした高付加価値のPBとしての地位を確立し、価格訴求が中心だったPBに風穴を開けた。品質で差別化すれば、消費者の来店動機にもつながる。

NB(ナショナルブランド)との価格差が目立つマヨネーズ。トップバリュでも、7月4日から値上げに踏み切る(撮影:尾形文繁)

イオンも近年は高付加価値商品の開発を進めてきた。「お客様満足度80%以上の評価をいただいた商品のみ発売する」という基準を設けた高価格帯ブランド「トップバリュ セレクト」を2015年に立ち上げ、品目数を拡大してきた。

ただ、業界内ではイオンの高付加価値商品はまだ力不足との見方が強い。あるスーパーの幹部も「セブンプレミアムは別格。(イオンも含めて)ほかのPBは価格で勝負しないとなかなか戦えない」と言う。

イオンは価格訴求色の強いトップバリュベストプライスだけではなく、高価格帯のトップバリュセレクトを含めて価格凍結を行っている。値上げする3品目以外の商品に関しては「8月もできればそのまま行きたい。値上げを行う場合も最小限にとどめたい」(イオントップバリュの和田本部長)。

今回は価格据え置きの期限を設定しなかったイオン。流通の巨人のやせ我慢はいつまで続くか。メーカーや小売関係者が気をもむ局面に、まだ終わりは見えない。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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