「料理がしんどい」と感じる人が増えつつある事情 一番の問題は「しんどい」と口に出せないことだ

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「以前、コペンハーゲンで個人のお宅に1週間滞在したことがあるのですが、食事の際、野菜をグリルしてオリーブオイルをかけただけ、といったシンプルな料理ばかり出てきました。でもそれがおいしい。日本では、めんつゆで作る肉じゃがなど、正当な作り方ではないだけで、工程はそれほどラクになっていない簡単レシピが紹介されている。もっと素材を生かした、シンプルな料理でもいいのではないでしょうか」

小竹氏によると、理想像に縛られている女性が多いという。特に40~50代は母親が日替わりの手の込んだ料理を作る家庭で育った人が多い。だから自分も同じようにしようと考える。主婦業を中心にしている人は、なおさらその理想に縛られがちだ。

小竹氏は「昼休みや夕方4時以降になると、アクセスがガーッと増える。みんな、献立を考えるから職場の休憩時間も休んでいない。レシピどおりにきっちり作ろうとする人も多いから、コメント欄に『豚肉って書いてありますが、鶏肉でもいいですか』なんて書き込んでしまうんです」とも言う。

夫が自然と協力してくれるように

しかし、変化の兆候もある。

「いつもインスタに、手の込んだステキな料理を上げている女性は、作るのがしんどいので、ある日インスタントラーメンを鍋で作って卵を入れ、『インスタントラーメンパーティーだよ!』と子どもたちに呼びかけた。そしたらすごく喜ばれ、『これでいいんだ』と思ったと話してくれました」(小竹氏)

一歩前に踏み出した人もいる。パートで働く54歳の主婦のSさんは、コロナ禍で負担が増えるのを見越し、在宅勤務の夫に「お昼、どうする?」とあえて聞くようにした。食事が出てくるのが当たり前、と思わせないようにするためだ。「ついうっかり作ってしまう」日もあるが、総菜やファストフードを買ってくる、カップラーメンにする、蕎麦を夫にゆでてもらうなどするときもある。

Sさんは結婚退職して主婦になったが、その後フルタイムで働いたことがある。その際、家事を抱え込んでしんどくなってしまったのだ。だから、「私の帰宅が遅いときは、『作っておいて』と言わなくても料理しておいてほしい。今のところ、私が出勤のとき夫がカレーか豚汁を作ってくれる程度なんですが。一番難しいのは、自分との戦いです」。

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