「料理がしんどい」と感じる人が増えつつある事情 一番の問題は「しんどい」と口に出せないことだ

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会社員の夫が在宅勤務になり、昼ご飯の準備が負担になっているのは、Iさんと同じだ。「絶対に作らないといけないわけではないんですが、11時半頃から『用意しようかな』、と自分に縛られてのんびりできない」というTさん。「前後の食事と重ならないように、何を作るか考えなければならない。今まで残り物を適当に食べていたのが、夫と同じようにお昼を食べるようになって太りました」と話す。

どの人も、まじめでやる気があり、きちんとした食事を家族に食べさせる工夫をしている。それなのに、なぜ彼女たちは自己評価が低く、料理を負担に感じてしまうのだろう。コロナ禍は潜在的に抱えていたしんどさを、彼女たちに突き付けたように見える。

料理が好きな人ほど、つらくなくなっている

「実は、コロナ禍で料理がしんどいと感じている人は増えています」と話すのは、クックパッドの創業時の立ち上げメンバーの1人、レシピ本『時間があっても、ごはん作りはしんどい』を出した小竹貴子氏だ。

「料理が好きな人ほど、つらくなっている傾向が強いです」と指摘する。「手抜きの知恵もあるし、ウーバーイーツも頼めることを知っているけれど、それでも負担を感じています。昔はケーキも作っていた人が、今は台所に立つだけで頭が痛いと言っていたりする」

小竹氏がこれまで聞いてきた「料理がしんどい」人たちの声に基づき、本で紹介しているのは、レパートリーが少ない、パートナーが非協力的、献立を考えるのが苦痛、家族が褒めてくれない、手抜き料理に罪悪感がある、といった項目である。前段のエッセイでラクになる考え方を提案したうえで、定番料理を中心にレシピを紹介している。そうした項目に、料理家たちからも「共感する」という声が小竹氏のもとに届いている。

「テレビなどのメディアは、こうした問題に対し、時短レシピなどの具体的な方法を示しがちです。でも、料理がつらくなっている人に必要なのは、解決方法ではなくて捉え方を変えることなんです。解決方法を知ると、それを実践しなければならない、とかえってしんどい気持ちがこじれるんです」と、小竹氏は解決法の紹介が逆効果になっている実態を指摘する。

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