「料理がしんどい」と感じる人が増えつつある事情 一番の問題は「しんどい」と口に出せないことだ
出版社に勤める42歳の中西葵さんは、コロナ禍以降「料理がしんどい」と感じることが増えたという。夫は多忙な新聞記者で、息子は今年4月に小学校に入ったところ。
2020年春、息子が通っていた幼稚園が休園になり給食がなくなったとき、中西さんには「自分が作ったものだけで、子どもの栄養状態が成り立ってしまう」プレッシャーがドッとかかってきた。
息子は好き嫌いが多く、野菜や海藻類、果物を嫌がる。イチゴは珍しく好きなので毎日食卓に出していたら、それも飽きて食べなくなった。幼稚園の調理師のようには工夫ができないため、息子は野菜不足になり、便通が毎日ではなくなってしまった。
日々の献立作りがつらい
休園時期が終わった後も中西さんの試練は続く。それは日々の献立作り。「料理上手な人は、冷蔵庫の中にある食材から献立を組み立てることができるのでしょうが、私はいちいちレシピを検索しなければ料理を決められないので、それも大変だと感じてしまいます。毎日午後2時ぐらいになると、『今日は何を作ろう』と考え始めるんです」と中西さん。
中西さんは子どもの頃、畑で穫れたばかりの野菜を食べてきた。培った味覚のセンスのよさも、逆に彼女を苦しめている。「チューブのショウガより生のショウガのほうが香りがいい」「サバの煮込みも電子レンジ調理より鍋で作ったほうがおいしい」と手間をかけて作ろうと考えてしまう。「やりたいことはあるのにスキルがないことが、余計に自分を追い詰めた気がします。もっと切り捨てられたらよかったんですが」と中西さんは言う。
料理技術や経験があっても、苦しんでいる人はいる。49歳の専業主婦のIさんは、会社員の夫、社会人と大学生の娘たちと暮らす。家族は皆、コロナ禍でリモート勤務やリモート授業の生活になった。
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